林田紀音夫全句集拾読 176
野口 裕
花札に黒賑やかな雨の牢
昭和五十一年、未発表句。珍しい句。黒は花札の裏地だろう。所在なげな花札のやりとりのようだが、「賑やか」という言い方がゲームに参加しない傍観者の視線を思わせる。
皿を拭き包丁を拭く乳房の辺
昭和五十一年、未発表句。物騒な刃物が出てくるのだが、危険な匂いは全くない。乳房に対する信頼感。
マヌカンのひとつ手を出す並木の雨
昭和五十一年、未発表句。マヌカンを描写する措辞が、そのまま作者の視線を感じさせる。「手を出し」ならば、視線はその後雨の都会をさまようことになる。だが、「手を出す」となっているので、視線はそのままマヌカンの手に留まる。雨を気にする風でもなく、作者の視線はいくつかあるマヌカンのひとつに注がれる。
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2011-08-07
林田紀音夫全句集拾読176 野口裕
Posted by wh at 0:05
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