商店街放浪記48
大阪・天王寺、あべの界隈(1)
小池康生
久しぶりに幹事のお役が回ってきた。
路地裏荒縄会の話である。
さて、どこに行くべか。
天王寺、あべの方面に行くぜよ。
天王寺、あべの方面に決めたはいいが、最近のあべのは全く知らない。
どこで待ち合わせをしていいものやら。それさえ迷う。
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待ち合わせ場所といえば、話を逸らして語りたいことがある。
新しい大阪駅の話である。
JR大阪駅が、斬新な大屋根を持ってリニューアルし、軒続きの百貨店も大人気である。
この大阪駅で、東京人と待ち合わせすることになった。
大阪のことをまったく知らない人と、新しい大阪駅のどこで待ち合わせをしたものか、とても迷った。
新しい大阪駅には、<金の時計><銀の時計>という待ち合わせ場所があるのだが、これは5階に相当する場所にあり、駅に降り立った人をそこまで歩かせるのは、分かりにくい。
時空の空間というなかなか感じのいいスペースに金と銀の日本の時計があるのだが、もう少し親切な場所にこの時計を作って欲しかった。
大阪駅にはじめて踏み込む人には指定しにくい場所である。
結局、1階中央口改札を出たところを指定した。
ぜんぜん新しくない場所だが、すんなりと会えた。
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元い。
天王寺、あべの界隈の待ち合わせ場所である。
最近できた<あべのキューズタウン>に行こうと考えたのだ。
どこで待ち合わせするのか。
待ち合わせ場所に悩む街は、どこか未完成だ。
街を作るときには、待ち合わせ場所も合わせて設計していただきたい。
シンプルで便利、これが待ち合わせ場所の鉄則である。
天王寺に集まる人たちは、どこで待ち合わせているのだろう。
昔は、天王寺の交差点の陸橋、近鉄百貨店入り口がよく利用したのだが、
今、ここは工事中なのだ。
検索をして、エイヤッと決める。
地下鉄御堂筋線・谷町線12号出口から、<あべキューズタウン>に続く道がある。<そこからビルに入った涼しいところ>と皆にメールする。
果たしてこれでちゃんと集まれるのか、どうか。
<大阪待ち合わせマップ>なんて本をあれば売れるのではないかなどと考えてしまう。
東京の人には、天王寺と言っても、その街がどこにあるか、そこからの話が必要だろう。
大阪には、キタとミナミと二つの大きな繁華街があることは御存知だろう。
キタは、梅田近辺。ミナミは、難波近辺。
この難波よりも、さらに南に天王寺の街がある。
聖徳太子の四天王寺が、そもそもの地名。
四天王寺という地名は今もあるが、その省略形の天王寺も地名となり、JRの駅にまでなっている。
歴史ある名の街だが、どうも、不憫な存在だった。
あくまでわたしの主観だが、魅力を感じるがゆえに不憫だった。
キタとミナミに分けたとき、そこに入れてもらえない三番目の繁華街である。
天王寺駅前の交差点を西に下ると、動物園前。
つまり、新世界じゃんじゃん横丁の入り口なのだ。
昔は、この交差点から、動物園前に続く道路は、信号のないところを平気で横切る人が大勢いて、結構アブナッカシイところであった。
タクシーの運転手もこの辺りは、注意深く運転していたものだ。
新世界や近辺の町から労働者や、道に寝る人が減り、新世界は、ガラリ変わった。
以前にも書いたが、家族連れで、それこそ幼児を連れて串カツを食べにくる街になった。
それに伴い、いや、時を同じくして、と言った方がいいのか、天王寺近辺も変わってきた。
大阪芸大生のターミナル、高校生等のたまり場、庶民的な町が急激に姿を変えている。
ここ数年は、交差点近辺が巨大な更地となり、続いて大型クレーンが聳えていた。それは今も続き、日本一のデパートを建設中なのだが、交差点の南西部に<あべのキューズタウン>というショッピングモールが今年誕生したのだ。
キタでもミナミでもない三番目の街は、どう変わるのか、一晩歩いただけでは分からないだろうが、路地裏荒縄会の面々が、ひとり、また一人と集まってくる。
市に隠る二百十日はきのふなり 几菫
(続く)
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10月1日、小池康生さんが、大阪城の「残念石」についてのシンポジウムで司会をされるそうです。「残念石」?と思われた方は、ぜひ。
2011-09-04
商店街放浪記48 大阪・天王寺、あべの界隈(1) 小池康生
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