2011-10-30

2011落選展テキスト  小早川忠義 浅葱裏

浅葱裏 小早川忠義

畦行くや爪先立ちに湯宿まで
母の手を振り解く子や七五三
ミサイルをいくつ吸ひ込む冬夕焼
浅漬を噛む音欲求不満にて
謝るもはや飽きてをり懐手
人の輪にありて話さず枯葎
息白き老カウボーイ投げ縄す
かきまぜてをれば葛湯にとろみ立つ
時雨るるや南京虫時計止まり
愚痴めいて手に余るなり冬林檎
組み伏され絨毯柄の枡数ふ
冬霧や父と喧嘩のできずあり
寒卵煮え湯にそつと沈ませぬ
短日や花の形に餃子盛り
暮れ六つと空に呟く冬曇り
野天風呂までこゑ届き焼藷屋
我が裡のをとこさざめく熊祭
義士の日の慶応義塾ひつそりと
年取や幾度祈らねばならぬ
厄落し三度目も何事もなく
たのみごと投扇興の合間にて
折詰の海老固くあり初芝居
ひめ始め浅葱裏とは呼ばれずに
羽子板に描かれし少女鼻のなく
嫁が君やもめの家に何用か
獅子舞や頭おとうとあには尻
餅の罅いよいよ割れて実千両
ラガー達我も我もと湯に入り
寒紅や夭折歌手の遺影濃く
人日の素うどん温く喉に落つ
初仕事水銀の瓶重くあり
東屋に冬まくなぎのちらちらと
小正月ミルクの缶に穴二つ
寒弾や耳に疲れのあるらしく
悴みてヨーヨーの手に戻らざり
小松菜を抱へ参るや鍋奉行
いかにして友とすべきか雪女郎
箸に歯に抗する冬の鯛であり
冬苺小鉢の縁を転げ落つ
都鳥都の果てを飛び立てり
絵踏かな佐世保バーガー眼前に
寒菊や花瓶に枯れず残りあり
熱さまし三つ残して風邪治る
寒柝を聞けばペダルの空転す
齧りゐる焼きたてのナン魚は氷に
立春の町医者を訪ふ救急車
北窓を開ければ月の淡くあり
冴返る終まで歩くアーケード
春寒や四羽の白鳥口衝いて
涅槃図や仲の良き者ばかりなり

1 comments:

たゞよし さんのコメント...

反省を込めて「ひとりミーティング」しました。