二等星ばかり 前北かおる
先立ちて旧正を賀す授業かな
白梅を仰ぐ即ち天仰ぐ
棒きれに拾ふ若布や犬散歩
庭にまはり座敷の雛を一見す
啓蟄や地神くさめをせるならむ
パンジーにお臍の胡麻の十余り
生うてはや魚と群れて水草は
剪定の脚立の下の将棋かな
一水にひらく山門朝桜
春風や西郷像は胸はだけ
残されし鯨の骨や潮干潟
朧夜や蝋燭の火もドビュッシーも
眺望に目を休めては茶を摘める
薔薇の香を吸ひ込めば空仰がるる
油気のかがやきてをり柿若葉
太平の世になまくらの武具飾る
天丼や髷の如くに穴子のせ
樹々濡れて明るかりけり梅雨に入る
大川は機関車に似てさみだるる
模型部の部室の黴の匂ひかな
黒岩や川蟹の朱を点じたる
二等星ばかりの平家蛍かな
夕立を過ぎて夕日へ新幹線
衝立の向かうの透けて夏座敷
草枕夜市に買ひしマンゴ匂ふ
苦瓜を呉るるなんくるないさあと
飛び立ちし窓に音なき花火かな
台風の目なる東京スカイツリー
ビルの窓拭くや秋日に背を晒し
灯を消して流せるバッハ月今宵
月明に地下の大根の太るらむ
鶏頭や捨てにし職を忘られず
続々と三桁ゼッケン体育の日
秋風の橋上に人待ちてをり
コスモスや次に会ふのはひと月後
藤の実の土鈴の如く鳴りぬべし
叢中に真つ逆さまや鵙の狩
銀杏黄葉空には雨後の雲流れ
猿酒の上澄みにして黄金さす
書と楽の中に主や冬日和
山車庫のシャッターに寄せ落葉かな
滝仰ぎゐれば風花目のあたり
熱燗や女が好きでしくじりて
冬空に透けて見えたる宇宙かな
腹這へば獅子めく赤子冬日射
門松を立てて休業札掲げ
泣いてゐし目の潤みや初笑
金粉の輝く花弁福寿草
橋渡り返して梅を探るかな
ゆりかごの如く三日月春隣
●
2011-10-30
2011落選展テキスト 前北かおる 二等星ばかり
登録:
コメントの投稿 (Atom)
1 comments:
夏潮HPの「汐まねき」にて勝手に鑑賞させて頂きました。
http://natsushio.com/?p=2424
生駒さん、小早川さんの作品と併せて評させて頂いております。
「夏潮」らしい俳句だと思いました。もっと思い切った氏らしい句があったら素敵だったと思います。
コメントを投稿