2012-11-04

2012落選展  23 山下つばさ 晩年 テキスト版

2012落選展 
23 山下つばさ 晩年 

蟹を追ふ鳥のかたちのワンピース
蚊柱をよけ教会の屋根真つ赤
空蝉を髪に付け合ふ遊びかな
らんちうもシーツの白が眩しさう
『ONE PIECE』全巻並ぶ部屋の薔薇
泣きわめく人に集へる蛍かな
芋を煮る芋に翼の生へるまで
母馬の野菊のやうに老いにけり
マンホールに人一人消ゆ冬の朝
得しものをしつこくつつく寒鴉
コーヒーのぽたりぽたりと落つ霜夜
ガムは道の模様となりて二月尽
歯のない人が笑つてゐるよ桜の下
ふらここを大人に譲る小人かな
藤房を揺らす真白きヘルメット
白鷺のまだそこにゐてシーツ乾く
梅雨明けの庭に王妃のやうな石
プリンスメロンは墓守となりにけり
牛乳の作る白ひげ薔薇の部屋
サボテンを貸しらんちうを借る晩年
亀の背にビル林立の西日かな
新宿西口空蝉を髪につけ
稲の花江戸より続く道の果て
手を振られ手を振り返す冬木立
大根のやうなインコを飼ひにけり
押し退けて雛壇上を目指しけり
鳩尾を離るる椿ぽたりぽたり
アネモネの白が厨を白くする
風船に歯を括りつけ抜きにけり
春の闇よりラーメンを啜る音
発光す一心不乱に土筆摘み
水面を目指すダイバー春の月
耳朶を過ぎて落花となりにけり
梨の花鉄やはらかくなる温度
拾ひやすき骨を拾ひぬ春の闇
青葉へと母消え父の現るる
眼帯をはづし緑雨を走りけり
脱毛の手足を畳む木下闇
六月の牧師しづかに目見開く
舌の飛び出す遠足の列最後尾
蜥蜴追ふ転校生の膝の裏
闇に照る祭りの後の足の裏
トーストの上のバターのやうに蔦
月に届け!葡萄の皮を高く積む
秋風にかつて生首転がりぬ
転がつて老子に出逢ふ蜜柑かな
かちんこちんの肉の塊花の雨
ヘリオトロープ耳元で囁けり
ジーンズの尻に夏服のリカちゃん
日焼けして猫耳カチューシャよく似合ふ


2 コメント:

ハードエッジ さんのコメント...

注目句
ガムは道の模様となりて二月尽  山下つばさ
得しものをしつこくつつく寒鴉  山下つばさ

minoru さんのコメント...

気になる一句
「ガムは道の模様となりて二月尽」
金魚鉢は路上の華になるけれど、吐き捨てられたガムもまた、模様のひとつとなって、道に「彩り」を添える。そんな受け止め方の屈折の度合いが面白い。暖かくなれば、融けて何かの底にくっついて運ばれ、跡形もなくなるかもしれないけれど。