2012-11-04

2012落選展 01福田若之 仲間たちと テキスト版

2012落選展 
01福田若之 仲間たちと

桜から桜へあるくそのあいだ
いまどきの創造かざぐるまデジャヴ
満たされなくてさえずりの下にいる
犬置き去りに電車は進む霞む日暮れ
パンジーの群れ夜行する乳母車
草を摘む教育的な一時間
ふと静か丸花蜂の歩むとき
春の空ピテカントロプスは嘘だ
陰影を濃く晩春の飛行船
のどかだねカチューシャは凶器になるね
恋愛が模型の丘に置いてある
くすりゆびよりなかゆびたちやすくはるかぜ
トラック3は麦の匂いを感じる曲
バーベキューあまりにたまねぎが煙る
社会とかその片隅の小蝿とか
青桐ざわめく突然変異したい夜
大学の木々みな蝉の留まる木々
無蓋車に海猫が来る救われたよ
サングラス越しにサングラスの自分
腰洗い槽に浸かって消えた個性
ビール噴く厨二病なのかなあ俺
へちま咲く雨を知らない火星の人
かつて八月水兵と看護師のキス
とんぼぎんいろカメラ向ければ風に発つ
島のはずれの銀河を仲間たちとゆく
夜明けの月子規はパンクだったと思う
すいか食べ終えて無意識なんだよ全部
九月は一気に青空だから(うつむく)
台風がしゃちの身体のように過ぎる
とうもろこし淋しい言葉ばかり出て
思い出を花野のなかで射殺する
天使が使いそうなスプーン水の秋
飛ばないでいられるいもむしのくらし
秋の雨あたまふたつのちかづくとき
おもしろくなりそうな街いわしぐも
ギターケース背に秋冷えのガード下
なんという霧にまかれていて思う
秋の日暮れのアーモンドくるしく噛む
ナップザック・セーター・煙草・女の子
停電のエレキギターを弾く みぞれ
冬のかもめの存在証明としての詩
シャープペンシルで書く「さびしい」は霜のよう
塔つめたく輝き空想科学の月
マフラーをゆるく森に遠く暮らす
真実が凍った薔薇をつきくずす
初雪眺める演劇論の窓際に
窒息したカンバス激しくなる暖炉
耳鳴りに遠近はない狼来る
なにもかも吹雪その中に息づく
金網の先に広がる瓦礫。愛は愛だ。


1 comments:

ハードエッジ さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。