2012落選展
16 すずきみのる 曲直
春浅し運命鑑定士は中座
タイムトンネル千本鳥居の先は春
窓が切りとる上下層春の塔
鳥交る色屑溜めてシユレツダー
パン・サラダ・うぐひすのこゑ朝の卓
庭石の残るあかるさ揚ひばり
拓本に私信の古ぶ万愚節
八十八夜少女に紫だつ会話
晩春のスタンウエイに輝やく塵
初夏の口腔に舌あるばかり
脳髄に似たる新樹やひと憩ふ
壁と床ひといろの部屋かしはもち
麦の秋アクアリウムに気泡の筒
ダービーや麦飯の上黄身の張り
極彩の渦身にまとひ朱夏のひと
新しきホテルの居室カーネーション
節電の夏や緑に染める髪
東西の塔の礎石や蝉時雨
万緑の奥トンネルの闇曲がり
ビール飲むくちもと見つめをんなのこ
吹き上げの鱗となりて落つる水
鍛錬会筆に並べてバナナ太し
漆黒の抜羽が秋の夜の湖へ
露けしや楢護るビニールおほひの嵩
稲妻にひらめく九輪闇の土
門川に朽ち橋ひとつ紅葉山
このたびは花の名前のほととぎす
相席は胸の大きなひとに萩
ひつぢ田や鬼の山より砂礫の川
霧吐ける山越えゆかば日本海
ながつきの黒き真珠をよそおひぬ
白菊や顔に眼鏡の置かれある
立冬や橋頭の僧鳴らす喉
冬の鵜のひろげて重さうな翼
冬川に石打ちなにも期待せず
はつゆきを競馬新聞にて避ける
てのひらにうつろふ水かげろふの冬
壁面に流るる錆の赤き凍
花見小路西入ル夜の雪まろげ
うらにしや両手をあはせあふあそび
直上の空透く寒の鳥居千
枇杷の花五指に災禍の月数ふ
まつばがに壁に這ひつくkyoto駅
珈琲にスプーン大きな根岸の冬
エプロン専門店出て冬晴の高き塔
その筋のをとことをんな黒コート
人去りし回廊自在の寒鴉
薔薇園の奥や斧鉄の冬比叡
くさぐさに名付けいづれも枯さうび
昼ま逢ふひと初夢のなかに笑む
●
2012-11-04
2012落選展 16 すずきみのる 曲直 テキスト版
登録:
コメントの投稿 (Atom)
1 comments:
注目句
吹き上げの鱗となりて落つる水 すずきみのる
コメントを投稿