2012-11-04

2012落選展 22 大穂照久 都市 テキスト版

2012落選展 
22 大穂照久 都市 

犬の亡き犬小屋に咲くミモザかな
啓蟄や遍く走る水道管
土降るや棺のごとき庭園に
傾きて都市見る夜間飛行かな
蛍烏賊ひとり眼をちぎりちぎり
コンセント抜く春の夜のかなしみに
遥かなり三万人の春休み
卒業の日の焼き肉をうらがえす
幾度も都は滅ぶ春の月
花冷えの家にテレビを灯すかな
流木の白き肌ある春の海
猫柳眺めている猫沖へ行けよ
初夏のガードレールを蹴って火曜日
屋上に空のあふれる皐月かな
新緑のなかにはためく星条旗
メーデーや君の着ぐるみぬいぐるみ
紫陽花の見える満員電車かな
砲丸の粉まみれなる日の盛
渋滞のほどけるところ熱帯夜
ともすれば夕立ややもすれば愛
瓶ビール海の深さを思いけり
撃ちおえて水鉄砲の軽さかな
熱帯魚交わる夜や海に砂
青芝に眠り地球の丸さかな
高速道路の坂道西日差す
陽炎やブラスバンドの音が止む
夕凪や火力発電所が彼方
蝙蝠がささやくビルの間かな
切手貼る愛を込めつつ貼る痛いか
爬虫類なり大理石ほど冷える
秋分やピエロは大きな靴を履く
地球儀は傾いており菊日和
自転車が錆びる金木犀の家
秋の雨犬の背中のやわらかし
鳥小屋の床に木くずや秋の暮
無花果が掌にあり生きており
公園の落ち葉を散らすふたりかな
カステラを二本いただく花木槿
名月の夜の縦列駐車かな
吊るされて窓拭く人や秋うらら
毛布抱く君の紅茶はすぐ冷める
凍星のひとつに東京タワーかな
つつまれてまぐろがはこばれるしぶや
遠い火事ぼくには口内炎がある
飛行船しずかに流れクリスマス
ガーベラや煙草の箱は捨てられる
駅舎より海辺の町や花八手
いちめんの大雪となり汚される
ナポリタン食いつつ年を惜しみけり
元日や映画のなかのカーチェイス

1 comments:

ハードエッジ さんのコメント...

注目句
撃ちおえて水鉄砲の軽さかな    大穂照久
啓蟄や遍く走る水道管       大穂照久
吊るされて窓拭く人や秋うらら   大穂照久