2013-01-20

第250号~第259号より 久留島元さんのオススメ記事

第250号~第259号より
久留島元さんのオススメ記事



最近では私もたまに原稿も載せてもらっていますが、「週刊俳句」も300号ですか。

「中の人」はじめ、執筆者各位、閲覧読者を含めた「週俳」関係者みなさんは、ホント毎週ご苦労様です、おめでとうございます。

「週俳」が毎週必ずアップされる継続性の凄さは周知のとおりですが、たまにこうやって回顧・再読が行われるのも、「読む」ことを重視する「週俳」ならではですね。

というわけで日頃お世話になっている「週俳」のため、割り振られた担当分、250号~259号を再読していたら、・・・なんか、すごいテキスト量でした。

自分もかかわった「写生・写生文研究会」レポート群は措いて、やはり一番の注目は…

『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』総括座談会(1)~(3)
第252号第253号

…でしょう。

2009年の『新撰21』を皮切りに、『超新撰21』(2010年)、『俳コレ』(2011年)と続いた邑書林刊行のアンソロジー・シリーズ。

その編集に関わった人たちによる、アンソロジー編集の経緯や裏舞台のアレコレをまとめた座談会で、参加者は、筑紫磐井氏、高山れおな氏、対馬康子氏、上田信治氏、西原天気氏。それに乱入約一名(西村我尼吾氏)。

邑書林アンソロジー・シリーズの意義については、筑紫磐井氏が「超・戦後俳句史」と位置づけ、各所で論評しているのはご存じの通り。

その喧伝ぶりは若干「ステマ乙w」と評したい部分もありますが、ある意味とても正直な行動です。つまり、「アンソロジー」は、単なる「合同句集」ではなく、編者のベストセレクションであり、大なり小なり編者なりの「俳句史」観が反映されている。

その結果、このアンソロジー・シリーズには、これから俳句の未来を担うと予想される人材の、全部ではありえないにしても多くが関わっただろうことは間違いない。

したがってこの座談会は、どの程度の割合になるかは後世が判断するにせよ、今後しばらくの俳句シーンのプロデュースに関わった、「黒幕」たちの証言ということになる。これは、面白くないわけがないです。

座談会を読むと、編者たちがアンソロジーに対して企図していた、意図やら野心やら思惑やらの、ズレと妥協と重なり合い、そのすりあわせ過程がよくわかります。

と同時に、「週俳」編である『俳コレ』が、前二者とは一線を画した「不連続性」のもとに企画され、プロデュースされていたことも、よくわかるわけです。

乱暴に3冊の性格をまとめれば、次のようになるでしょうか。

『新撰21』は、一番先に資金提供者から相談された高山れおな氏が主導になった、「若手の先頭集団を総浚えにしてインパクトのある」「ぎらぎらした」選集。

『超新撰21』は、出版元である島田牙城氏と編者の筑紫磐井氏が主導した、従来の「結社の軸」からは「うずもれていた作家」デビューの場。

『俳コレ』は、上田信治氏による「今そこにある俳句に対するレスポンス」、「自分の価値基準で読みうる俳句の作り手の最右翼から最左翼まで」入ったアンソロジー。

今回のアンソロジー・シリーズが同一出版社から連続して出版されたことを思えば、もっと3冊の個性は近似していいはずですが、改めて随分毛色が違うことがわかります。

ただ、あえていえば、現在の「俳壇」に対して「流動性・多様性を導入しようとする」意図は重なっている。(対し方は、鋭角的か「ぶっちがい」かの違いはありますが)

逆にいえば3冊の違いが、現在進行形俳句の多様性を反映していると言えそうです。

多様性の時代ということであれば、すでに入集している作家も含めて、まだまだ違った切り口での「俳句史」の描き方は、今後もありえそうです。

上田氏の「価値基準」は相当広いので、アンソロジーの波が一旦中断しているのはよくわかりますが、この波紋は、まだ続く余地があるんじゃないかな、と。

(そういえば私が関わっている「関西俳句なう」選のアンソロジーが昨年以来、準備中のままなのでした・・・と、ここはいつかのための宣伝。)

とはいえこの座談会、よく読むと「帝国ホテル鷽替の間」「平成24年1月18日」で開催とあるにも関わらず、(3)末尾には「今日は、みなさん集まりもせずにこれだけ語っていただきまして、ありがとうございました。」とあって、え、これ、もしかしてメールのやりとりで再構成したものなんですかね? そういえば「鶯替の間」って・・・??

そうだとすると、再構成による「物語化」の危険性もあり。ううむ、こういった「編集」「プロデュース」の裏表、虚実皮膜のあわいをさらけ出すのが、「週俳」らしさであり、自己プロデュース力の問われる現代ならではなのかなあ、などと。


そのほか、担当分の印象深い記事から、一言ずつ。

金原まさ子さん101歳お誕生日インタビュー インタビュー上田信治
第250号

上田 金原さんは「腐女子」でらっしゃる。

西岡伊吹〔週刊俳句時評60〕「おれは―― 確定申告もあるし」“震災詠”について思うこと
第255号

驚くのは、御中虫氏がここまで「自分にとっての震災とは何か」という問いを突き詰めたことである。(御中虫『関揺れる』を評して)

西村麒麟:いーな伊那っていうけれど
第256号

寝て起きて又のむ酒や花心
井月さんもね、どんなに伊那の人達によくしてもらっていたとしても、僕は寂しかっただろうなと思うんですよ、伊那が好きなのと同時に伊那に居るしかない、という思いも強かったはずです。



第250号~第259号

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