予選に携わって
西原天気
65作品のすべて(と言って言い過ぎなら、ほとんど)が意欲作と思いました。倒れるときは前のめりに。これは俳句にも当てはまる。倒れる=失敗をネガティブに捉えてはいません。表現に完全な成功などなく、すべてはなんらかの失敗だと思っています。そのとき、後ろ向きに、あるいはその場で倒れこんでしまうのではなく、前へ。自戒を込めて、そう考えています。前のめりの作品。多かったと思います。
そのうえで、私が選ばれせていただいたのは、比較的、穏当な作風だったかもしれません。けれども、穏当には穏当のチャレンジがあり、前に進もうとする姿勢がだいじ。なにかを仕掛けていく俳句は、おもしろいです。
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目を引いたのは「38.上毛かるたのうた」。見かけが他とまったく違うのだから、目を引くのは当たり前です。楽しませていただきました。けれども、点は振り当てませんでした。かるたというには、10句は少なすぎるからです。
この作品が予選を通過したかどうか、私にとっても、開けてのお楽しみです。もしも不通過の場合、50句なり51句なりが揃ったところで、ぜひ連絡をください(tenki.saibara@gmail.com)。競作ではなく、掲載させていただきたいです。
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ひとつネガティブな方面の意見・感想も書いておきます。10句作品というとき、季節をどう設えるか。いま読むのに、いまの季節(春、、早春?)で揃えるのが順当でしょうか。あるいは10句で一年をひとめぐり。あるいは冬から春へ(ある季節から次の季節へ)。あるは無季。趣向は作者が選べばいいのですが、季節への「意識」は不可欠だと思います。これは季題やら季語やらといった「俳句の習わし」「俳句世間の習俗」として言っているのではけっしてなく、読者の「生理」として。
いくつかの作品には、以上に述べたような「季節の設え」を欠いた、あるいは意識が及んでいないような印象を持ちました。
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ともかく、応募作のすべてに拍手を送りながら、読ませていただきました。
ひとつひとつの作品に、読者との幸福な出会いがありますように、と祈っています。予選を通過しようがしよまいが、65作品にすべてに、出会いのチャンスはあります(作者が記名されて誌上に発表される・されないの違いはありますが、そんなことは、作品と読者の出会いという根本に比べれば些細なことです)。
じつは、この10句競作、私も応募しようかと少し考え、迷ってしました。いま思うと、しときゃあよかったな、と。そうであれば、もちろん、この予選の作業には携わってはいないのですが。
このあとに始まる選考を、楽しく見物することにします。
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2013-03-17
予選に携わって 西原天気
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