2013-05-12

創刊6周年記念誌上句会 【書】選句と作者・一覧

創刊6周年記念誌上句会
【書】選句と作者・一覧



Tシャツを脱ぎてふたりの書生かな
  忠義
○山田露結○藤幹子
■何て事ないんですが、ひょろっとしてるかな。意外にどちらかはいい体をしていたりするかな。全く説明がないのがいい。書生なる大時代的な言葉が、充分想像を刺激してくれる。(藤幹子)
■今話題のBLもの?(山田露結)

しやつくりの響く古書店春の昼
  豊永裕美
○小市○遊起○石井薔子○柏柳明子○小松三々○村田篠
■聞こえないふりをしても気になってしまうしゃっくり。古書店ならなおさら。「春の昼」を音で描写したところがとても面白いです。(村田篠)
■しゃっくりをしたのは客か店主か、いずれ閑散とした静かな古書店です。「春の昼」だ、次は誰かのあくびが聞こえてきそうです。(小松三々)
■古書店の堆き時間の手触りが感じられる。(柏柳明子)
■しゃっくりは案外大きな音だしあくびと違って噛み殺せない。客が二三人ののどかな店内。春の昼がぴったり。(石井薔子)
■やや暗く湿っぽい古書店、しゃっくりとは響くでしょう。昼飯の後のサラリーマンの爪楊枝ちくちくしたりして。(遊起)
■まともな古本屋は静かである。だからしゃっくりが響くのだ。おやじは昨夜呑みすぎたのかもしれない。(小市)

へびいちご白書色褪せたる晩夏
  fuchi
○バンの○石原明○ハードエッジ
■「いちご白書」を知らないとワケワカかも。「へびいちご」はいいとして、晩夏で、色褪せて、では少々月並。そういう狙いなのか?でも、もう少し捻って欲しかった。(ハードエッジ)
■「いちご白書」ではなくて「へびいちご白書」。季重なりだが「へびいちご白書」とした気持ちは伝わる。(石原明)
■ へびいちごも白書も遠くから見るだけでやがて褪せていくという抒情に共振。(バンの)

瓜を蒔く焚書の話などしつつ  村田篠
○石井薔子○中山泡○独楽○M-s○青葉有
■日常生活の中にも実は厳しい現実の側面を切り取ってみせている句(青葉有)
■季語と「焚書」との取り合わせにひかれた。ちょっと文人俳句風で。風格を感じる。(M-s)
■焚書という特殊な話題によって、種蒔きという行為が平和なものに感じられます。(独楽)
■「など」が良いと思います。(中山泡)
■瓜を蒔く同じ地平に焚書の黒い穴が見え、そのさらに先に戦の土煙も上がっているような。(石井薔子)

下書きの祝ひのことば豆の花  柏柳明子
○忠義○中村遥○小松三々○青葉有
■春のお祝いだろうか、すこし安堵感もにじむところに共感(青葉有)
■大切な人に、祝う言葉を届けたい。でも、自分の気持ちを最大限伝えるための言葉は、なかなか整わない。よく見ればなかなか美しい豆の花のような、ひかえめでも響くことばが書き留められているのだろうと思わせてくれます。(小松三々)
■このお祝いの言葉は美辞麗句ではなく作者の心からの素直なお祝いの言葉であると思われる。〈豆の花〉という季語によって。(中村遥)
■これで間違っていないだろうかと思案しながらその過程は楽しさが伴う。(忠義)

花冷や書棚に掛ける大梯子  栗山心
○野口裕○透水○中村遥○石井薔子○石原明○近恵
■花冷えがぴったり。本当にひんやりとしてる(近恵)
■大梯子であるから大きな図書館であろうか。図書館の冷え冷えとした感じが花冷とあっていると思う。(石原明)
■大梯子のかっちりした感じと、花冷のひんやり感がよく合っている。(石井薔子)
■大きな梯子を必要とする程の図書館の空気を〈花冷え〉と取り合わせてその静けさをうまく表現している。(中村遥)
■はしご段に足掛けたまま、本を箱から取り出すような動作が想像されます。(野口裕)

教科書の燕は卵抱き始む  藤幹子

古書店の活字横切る守宮かな  小松三々
○柏柳明子
■古書店そして古書ならばありそうだ、守宮が横切ることも。(柏柳明子)

古書店の憂ひ菜飯を食ふてより   独楽

子兎を握り書物の中に立つ  中山泡
○山田露結○豊永裕美○近恵
■子兎を握るという不思議さから、本当に書物の中に入ってしまっているよう(近恵)
■童話でしょうか、それとも(山田露結)
■やさしく抱え上げている。うさぎの柔らかな感じと書物が合っている。(豊永裕美)

春陰の書き損じ否打ち損じ  石井薔子
○KIYOAKI FILM
■物書きの姿が好い。(KIYOAKI FILM)

書くという行為が叩くキーボード  野口裕

書ばかり読んで阿呆に春の雷  ハードエッジ

書を丸め未来を覗く一年生  透水
○バンの
■いつか見た情景で、誰にも好まれそうな句。小生には作れない。(バンの)

書架の奥は紙魚の栖の小銀河  バンの
○野口裕○中村遥
■小銀河と捉えた手柄。(中村遥)
■暗黒物質が詰まっているのでしょう。(野口裕)

書記長が名前を秘して逃げる夏  小市
○fuchi
■「贅六が……」→「聖五月……」→「麗らかや……」に続く四句目。70年代、学生運動もいよいよ末期的症状に。(fuchi)

書簏とはしよろくと読みて冬の朝  M-s

図書室にプールの声の届きたる  山田露結
○小市○バンの○忠義○遊起○石井薔子○藤幹子○小松三々○今村豊○ハードエッジ○独楽○M-s
■何気ない情景だけれど、図書館の静寂とプールの喧噪が自ずと伝わってくる。上手いなと思う。(M-s)
■珍しくはない景ですが、素直な描写に好感が持てます。(独楽)
■教室ではなく、図書館でもない、図書室。うまいです。気怠さ。夏休みか?(ハードエッジ)
■プールの声って確かによく響くもの。夏が来た感。(今村豊)
■ここに感じる日差し、それは、少し離れたプールから声や水音が聞こえる、図書室の開いた窓からの日差し。しずかな開放感が心地よいです。(小松三々)
■図書室にいりびたる者には良くあること。ちょっとだけ鬱屈した気持ちにも混ざるようで、ちくちくします。(藤幹子)
■静かな図書館とプールの対比。もう夏の盛りのように子供ははしゃぐ。(遊起)
■高校時代の夏の日が蘇る。図書室で静かに本を読んでいるとプールからの声が聞こえてくる。精神と肉体との対比。(小市)
■中学・高校時代のひかりや空気の薫りを思い出させます。(バンの)
■文科系と体育会系の邂逅の瞬間。(忠義)

全くの子と言う蝗横向く牛  KIYOAKI FILM

鳥帰る教科書で見た島の方  青葉有
○藤幹子○柏柳明子○近恵○栗山心
■具体的な島の名前ではなく、「教科書で見た」という曖昧な感じが、鳥と作者の距離感を表しているようです。自然の中ではなく、都会か、それに近いところで生きている人の感覚。遠くへ行きたいと思っている、作者の気持ちも感じます。(栗山心)
■教科書で見た島の方というざっくりとした感じが好きです(近恵)
■作者はその島に訪れたことがないのだろう。鳥の姿に託してしばし作者も読者も飛ぶ。(柏柳明子)
■まだ見ぬ島に思いを馳せる、少年らしさがいい。(藤幹子)

凸の書き順凹の書き順さくら散る  今村豊
○バンの○中村遥○M-s○栗山心
■えっ、書き順ってあるの?と誰もが驚かされたのでは。さくらの季節になる度にも思い出しそう。(栗山心)
■確かに、あの書き順にはちょっと困惑する。さくらもしづ心なく散ってゆくし……。(M-s)
■凸も凹も5画の漢字、ややもすると一筆書をしそう。上五中七と季語がどう響きあうのか分からないが…。何故か〈さくら散る〉に 「サクラチル」 と言う電報の言葉を思い出した。もう遠い遠い昔の大学入試結果の電報。懐かしさから頂いた。(中村遥)
■ 流れるような語感に面白さがあり、最後に書き順など、どうでもいいかのようにフッと消えてしまう。(バンの)

虹色の雨となりたる夏書かな  中村遥

白蓮のたっぷり錆びて書庫の奥  六番町

曝書して当て字だらけの世界地図  石原明
○豊永裕美○遊起○石井薔子○柏柳明子○村田篠○M-s
■古地図なのだろうか。「当て字」というところが発見。装飾文字風な印象を与える旧字体で書かれていたのだろう、などと想像を拡げる。(M-s)
■伊太利亜とか英吉利とか。「当て字」という言葉だけで古い世界地図だということが分かります。(村田篠)
■季語もいいし、明快で題を生かしていて。ほんと好きです。(柏柳明子)
■古文書の曝書はページを繰りながらするので、つい当て字まで見えてくる。世界地図は見ごたえがあります。(遊起)
■世界地図を大きく広げた様子が伝わってくる。「当て字」もいいです。(豊永裕美)

万作や線量計を書き留める  遊起
○KIYOAKI FILM
■味のある俳句と感じました。好きな形。(KIYOAKI FILM)

野遊や終わらせたくて大きく書く  近恵
○藤幹子○中山泡
■世界が好きでした。(中山泡)
■終わらせたくて、がリアルで。(藤幹子)

5 comments:

ハードエッジ さんのコメント...

  下書きの祝ひのことば豆の花  柏柳明子

祝ひの言葉、と答を言ってしまっては
いかんと思うんですがどうでしょう?

  下書きに少し手を入れ豆の花、とか

慶事の雰囲気はあるつもりだけど
地味過ぎ?

ハードエッジ さんのコメント...

図書室にプールの声の届きたる  山田露結

作者名見て驚きのプールかな  ハードエッジ(笑)

ハードエッジ さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
ハードエッジ さんのコメント...

曝書して当て字だらけの世界地図  石原明
  曝書=冊子、
  世界地図=一枚もの、
  のズレが気になりました
  広義の曝書とは思いますが、、、
  当て字自体を詠むと、、、

葡萄牙和蘭陀の書を曝すかな  ハードエッジ 2013.5.13
曝す書の英語独逸語仏蘭西語  ハードエッジ 2013.5.13
  やはり、地図の広がりがないですね

欧羅巴亜細亜亜米利加虫干しす  ハードエッジ 2013.5.13
  兼題逸脱
  地図と判るかどうか、、、
  色々、練習させて頂きました。感謝

ハードエッジ さんのコメント...

前言訂正、
一読、
世界地図=壁に掛けるような大判を
想像したのですが、
曝書から逆算するなら、
書籍の中の図版でもいいわけですね
無論、
見開きや折込みでも、、、

しかし、やはり、
世界地図は大判一枚ものでなきゃあ
と強弁しておきます(笑)

大東亞共榮圈圖虫干しす  ハードエッジ 2013.5.13