自由律俳句を読む 4
母 (二)
馬場古戸暢
母 (二)
馬場古戸暢
前回に引き続き、「母」にちなんだ句を取り上げてみよう。
汗かき母の入れ墨が透ける 粟野賢太郎
入れ墨に縁がないためよくわからないが、 汗をかくと透けるのだろうか。それともあるいは、 服が薄いためかあるいは濡れることで、 その下の入れ墨が透けて見えるということだろうか。 どちらにせよ、 剛毅な母がこの作者の前には突っ立っているのである。
かあちゃんが言えて母のない子よ 住宅顕信
顕信はこの時、一人息子を自身が入院する病室で育てていた。 妻はとっくに出て行ってしまっている。 かあちゃんという言葉をどこからか覚えてきたはいいが、 この子には母親がいないのである。父親の目線で詠まれた一句。
母の病む冷たい春の桜だ 薄井啓司
「春の桜」とあえて言ったからには、 きっと満開の桜であったろう。しかし未だ風が冷たく、 母は床に臥せっている。窓からみえる桜を眺めながら、 母の快癒を願ってそばを離れられないでいる。
●
0 comments:
コメントを投稿