SD 上田信治
赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり 斎藤茂吉
赤茄子を二三歩離れものおもふ
大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも 北原白秋
秋の空時計が見えて大きな手
壮年のなみだはみだりがはしきを酢の壜の縦ひとすぢのきず 塚本邦雄
千鳥酢の色立たせたる秋日かな
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪降るさらば明日も降りなむ 山中智恵子
タクシーを降りれば雪の田無かな
冬の日の丘わたり棲む連雀は慓悍の雄いまも率たりや 岡井隆
連雀やぱつと消えたる男伊達
雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁 斉藤齋藤
しぐるゝや海苔弁うすく醤油味
にぎりしめる手の、ほそい手の、ああひとがすべて子どもであった日の手の 笹井宏之
鍋釜に把手やさしき月あかり
冷やし中華はけっきょく一度だけ食べて長い髪して夏をすごした 永井祐
冷し中華の写真が二枚電話の中
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2013-10-13
10句作品テキスト 上田信治 SD
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