自由律俳句を読む 16
なかぎりせいじ 〔2〕
馬場古戸暢
前回に引き続き、なかぎりせいじ句の鑑賞を行う。
あの子がぽちぽち食べていた松の実 なかぎりせいじ
松の実を見るたびに思い出すあの子。あの子に淡い恋心をこちらが抱いていたのかもしれないし、あるいは、同性の友人だったのかもしれない。時代を感じるのは、松の実を食べる習慣を私が持たなかったためか。
潮風に黙って吹かれる母が居る 同
作者と母は、海のそばで暮らしているのだろう。この句からは、潮風が母にとっての日常であるような印象を受けるのである。母の静かな生活が滲み出ている。
西陽背負って川崎競輪場 同
西陽と川崎競輪場のインパクトが大きい句。今日は勝ったのか負けたのか、どちらにもとれる。
チェロケース通路ふさいで日曜の車両 同
このチェロケースの持ち主は、これからどこかでチェロを演奏するのだろう。おもむろに車両内でチェロを取り出して引いてくれたなら、通路をふさいでいたことも不問となるか。
眉寄せて拝む女に地蔵半眼 同
何を拝んでいたのかわからないが、女の熱心さはその眉に現れている。それに対して、地蔵は半眼。真面目にきいているのかきいていないのか。作者はよく気付き、よく詠んだものと思う。
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2013-10-20
自由律俳句を読む 16 なかぎりせいじ〔2〕 馬場古戸暢
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