10 餃子 津野利行
春の夜の二人餃子を食べて行き
水割の一口で酔ふフリージア
啜り泣く卒業式のスピーカー
作業着のままに地べたの花見酒
揚雲雀寝転んで見る草野球
子離れは先送りして花は葉に
デモ隊の拳は空に薄暑光
ディーゼルカー代田の水を走りけり
夕立や餃子にたらすゴマ油
風薫る築地試食の玉子焼き
厩橋駒形橋も風涼し
橋涼み水に流すことにして
夏場所の終えて餃子の店狭し
らしくない人も神輿に紛れをり
ハンバーガー子供神輿を取り囲み
下町に見慣れぬ顔や黄金虫
おばあちやん日傘に名札ぶらさげて
跣だけベビーカーから遊ばせて
とりあへずビールと餃子二枚から
本当は四角き筈の夏布団
サイダーの泡の動かぬ時間かな
アイスクリーム溶けゆく仲となりにけり
角立たぬ話であらう水羊羹
白玉や個性溢れる顔形
大西日墓地は閉門時間過ぎ
夏痩せの悟られぬやう焼餃子
抱つこしてもらひポストに白木槿
コスモスの揺れて小さき親孝行
団栗や落ちて馴染めぬアスファルト
叩かれし西瓜震へて答へけり
秋果積む序列社会の中にをり
子の作る餃子丸々豊の秋
足袋底の松に跨る松手入
舞ひ散るは外れ馬券や神の留守
身を寄せて十一月の水餃子
手袋のままに手術を待ちにけり
鯛焼の表の顔と裏の顔
オノマトペ探してをりぬ冬の雨
飲めもせぬ酒に寝酒と名付けたり
ストーブの火を消すボタン押すだけの
洗濯物吊してメリークリスマス
もはや子の寝付くは待てぬ聖夜かな
年の瀬や餃子に賞味期限あり
火事跡に接待の跡形もなく
カラオケの隅マフラーをしたままの
初夢は餃子の皮に包まれて
初電話ありとあらゆる関西弁
珍しく妻逃げ出さず初写真
正月を返上しての口内炎
宝船餃子は渡る日本海
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2013-11-03
2013落選展テキスト 10餃子 津野利行
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2 comments:
「餃子」を中心に50句というストーリーが展開されていて、素直な標題だと思いました。家族のほのぼのとした光景に好感を持ちました。餃子よりも、私には
鯛焼の表の顔と裏の顔
が一番印象に残りました。それはまるで千円札の野口英世の顔右半分と、左半分が全く違うように、鯛焼にもそのような濃い陰影を想像しました。とてもユニークな句だと思います。
澤田さん、コメントありがとうございました!澤田さんからコメントいただけてとてもうれしいです。
鯛焼の句、私も気に入っている句でして、この句の印象が残ってくれたとのことも合わせて大変うれしく思っております。
頂いた句集のお返事も早くと思っておりましたが、夏以降ばたばたしておりましてこの場を借りましてお礼とお詫びも申し上げさせていただくことをお許しください。お会いする機会がありましたらその節はよろしくお願いします。
コメントへのお礼も遅くなりましてすいませんでした。
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