自由律俳句を読む 53 小澤碧童〔1〕
馬場古戸暢
馬場古戸暢
小澤碧童(おざわへきどう、1881-1941)は、子規門の松下紫人に指導を受けて後、碧梧桐門へ入門した。瀧井孝『無限抱擁』に出てくる主人公の友人青舎は、碧童をモデルとしている。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
初冬三日程の髭の伸び 小澤碧童
たまの連休があったのだろう。これから寒くなるのだから、暖をとる目的で、このまま伸ばしっぱなしでいるのも悪くないかもしれない。
ねぎまの煮え我より箸下ろしたる 同
家長らしい句。あるいは単に食いしん坊だったのだろうか。酒が進みそうである。
家の者よ布団敷くよろこびの満ち 同
家の者よというどこか中途半端な呼びかけに、面白みを感じる。妻や子が騒ぎながら、畳の上に布団を敷いている様が浮かんでくる。小さな幸せに満ち溢れた句。
もう寝かして欲しくお前の膝に娥が落ち 同
居間でのできごとか、寝間でのできごとか。それ次第で、詠まれた景はがらりと変わる。居間であれば、お前は正座をして、俺に説教をし続けていたのだろう。
盆燈籠よわが酔ひしれて寝るまでなり 同
普段は何も感じない盆燈籠に意味を見出すのは、酒が入っているからだろう。あるいは、お盆に帰って来たご先祖様が成せる業か。
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