自由律俳句を読む 54 小澤碧童〔2〕
馬場古戸暢
馬場古戸暢
前回に引き続き、小澤碧童句を鑑賞する。
額に来る蠅の一人居るなり 小澤碧童
ここでの一人は、碧堂自身の方を指しているものと考えている。蠅だけが動き回る世界、家人はまだ、帰ってこぬ。
大きな鯵のひものとしよりの夏のまひる 同
夏の暑い最中、鯵のひものが干してある縁側に、としよりがひとりで何するわけもなく座っているのだろう。このとしよりを碧童自身とした場合と別の誰かとした場合では、視点がくるりと逆転する。
夏蜜柑を買ひ子供の手に触れ 同
子供が夏蜜柑を売っていたのだろうか。時代を感じさせる句。もっとも、子供の手のあたたかさは、いつの時代も変わるまい。
十薬眺めゐる俺を妻は知らうとせず 同
体調を崩して、十薬を飲むこととなったのだろうか。そんな俺のことを、妻は気にもかけていない。結婚何年目の状況か、気になる句。
あるまゝにまた成るまゝに柿落葉 同
この句を英訳するならば、Let it beから始まることとなろうか。B'zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」の歌を思い浮かべると、柿落葉に急に躍動感が出る。
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