自由律俳句を読む 59 そねだゆ〔1〕
馬場古戸暢
そねだゆ(1941-)は、自由律俳句(随句)誌『草原』の編集長である。近年発足した「自由律句のひろば」の機関紙やHPの編集を担当するなど、多方面において積極的な活動を続けている。
あんなに空高く夜の旅人がいる そねだゆ
私自身が空港のそばに住んでいるためか、この句を思い出すことがしばしばある。現代らしい一句。
窓の指紋の霜になった 同
何もしたくない冬の日には、スマホやパソコンをいじるよりもこんなことをして時間を潰したい。目にも優しいので。
孫の泣き顔に皆の笑い顔 同
微笑ましい景だが、よくよく考えると、孫側からしてみればたまったものではない。自身の不満や悲しみを泣いて主張しているにも関わらず、周囲はただ笑い続けるだけなのだ。現在の私がこの孫の立場であれば、恐怖を感じるほかない。
買ったのよのスカートが回る 同
一読、少女の様を詠んだものかと考えたが、自分では買わないようにも思う。ここではやはり妙齢の女性が、作者へ見せるためにぐるぐると回ったところだろう。愛らしさがでている。
でもねが続く女の口元 同
女との関係性あるいは作者のその日の気分如何で、この「でもね」が可愛らしくもあり憎らしくもあることだろう。とりあえずの視線を口元に定めた点も面白い。
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