自由律俳句を読む 66 宮林釜村
馬場古戸暢
宮林釜村(1884-1966)は、長野出身の自由律俳人。新傾向運動に参加したものの、碧梧桐を碧師と呼ぶことは一度もなく、子規のみを唯一の師とした。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
白い雲から窓に蝉が来てしばらく 宮林釜村
現代においても詠まれそうな景であり、使われそうな言葉である。空からやってきた蝶に、しばらく心も楽しくなっただろう。
麦青々と女を得べし 同
麦も女も、青々と輝いているような句。「得べし」の強さに惹かれるところがある。
秋日あひるの子大きな口をもち飼はれ 同
あひるを実際に最後に見たのは、少年時代のことであったように思う。都市部に住んで日常生活に動物がいなくなると、こうした句にノスタルジーを覚えてしまうのである。
大根煮くたれ煮くたれ一茶忌 同
「煮くたれ」は「憎たれ」とかけていることもありうるか。そうすれば、大根の料理に憎しみをぶつけている句ともとられられる。とにもかくにも今日は一茶忌、釜村にとってはそちらの方が重要だったことだろう。
人待てば冬日あたたかし人来り 同
スマホもipodも何もない冬の、人待ちの様子をよく詠んだ。現代とあの頃とでは、時間の過ごし方が随分と違ったことだろう。
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