11 舞ふて舞ふて舞ふてまだまだ枯一葉 片岡義順
春
菜の花や畦にひと束捨て置かる
鎌倉に春訪れし能舞台
草摘むや衣一枚薄くして
山寺にひらめく旗や仏生会
春暁や卑弥呼のお告げスカイツリー
シクラメン残し帰らぬテロリスト
裁判所更地となりし葱坊主
待たされし吹き抜け土間の余寒かな
地に落ちし赤き椿の大と小
読みすすむ史書の厚みや花の雨
陸橋に遠ざかる人花の冷え
桜闇裸身匂へり観音堂
夏
パリの虹モディリアーニはぬれ鼠
エーゲ海拗ねた男のサングラス
日航のファーストラウンジ花菖蒲
どよめきを耳に花火師ピザ喰らふ
開けぬ蔵帰らぬ主の武者人形
葉桜や葬儀あるらし人の寄る
男の背つのる思いや木下闇
ひまわりや首持ち去られ葉が騒ぐ
異風なり男の眉に雷雨かな
五月闇兵ひそみをり大手門
泰山木睡れる僧に仏寄る
二畳半すする新茶の思慮ふかき
帰らざる人吸われしや蛍狩
影になり翼になって風の盆
秋
月見の夜団子満席新幹線
夜が来て子を産む兆し案山子かな
波斯から密書が届く柘榴の実
玄関に猫の爪痕乱歩の忌
門閉ざす柊の花いそぐ帰路
あげてくる浪音せわし野分くる
喉を過ぐ風は絹なり新豆腐
畦道に女慟哭曼珠沙華
銀匙のくもり訝る秋思かな
秋澄めり青年僧の剃りしあと
司馬遼と駆けし戦国夜長かな
滅びしものゆれているなり芒の穂
冬
人魂や亭主は亡者夜鳴き蕎麦
葱洗ふ嫁の依怙地や手の白き
ひかりから葬列を見ゆ冬の土堤
はなごろも置かれしままの久女の忌
鴎外や髭の凍りし軍馬かな
江戸の狂北斎ゴッホパリ時雨
戸を叩く何を背負うて雪女
一碗に賭けし茶人や冬嵐
断崖に百年一樹寒椿
三島由紀夫雪ひかる朝日本刀
冬銀河縄文土器と京友禅
山椒魚明治の森の神話かな
2014-11-02
落選展2014_11 舞ふて舞ふて舞ふてまだまだ枯一葉 片岡義順 _テキスト
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1 comments:
パリの虹モディリアーニはぬれ鼠
パリ、虹、モディリアーニ、ぬれ鼠の四重奏による、20世紀レトロモダン感! なかなか出せるものではありません。
葱洗ふ嫁の依怙地や手の白き
こちらも、情念を背負う語の畳み掛けが強烈。手に思わず力が入るというもの。
三島由紀夫雪ひかる朝日本刀
いや、三島をここまでストレートに詠む気概はすごいと思う。昭和は遠くなりにけり。
昭和邦画的、20世紀的なレトロモダン感がうまく効いたとき、オンリーワンの魅力が滲み出る。
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