2014-11-02

落選展2014_14 新機軸 すずきみのる _テキスト

14 新機軸 すずきみのる

オートバイ止め残雪へ集まり来
生徒はや自主登校の二月来る
宇宙より春一番の雲の布置
春風や花を絶やさぬペットの墓
壺焼のさみどり残す肝の尖
パライソを夢見つ紫木蓮めくれ咲き
老々介護垣に青木の花いくつ
螺髪より納衣と甘茶かけ申す
ピクルスの瓶にふやけて目借り時
電線とひとつの影に夕燕
煮られつつあり白繭もその夢も
ひきがえる歩む素股を光らせつ
岩盤に影を落として岩魚浮く
レンガまるく囲ひて孔雀草咲かす
夏断にはあらねど酒色控ふると
桑の実はげんこつの味怠学子
水鉄砲土蔵の壁を汚したる
さまざまに腹鳴るものよ水中り
高気圧居座つてゐる房バナナ
その中に制服もゐて御命講
口論ののちの沈黙姫林檎
七草の秋の一花を保護せむと
初月やLEDで鎧ふ塔
蟷螂の三角の貌振りて食む
夜学子と椅子触れ教師飯を食ふ
登高の海に真向かふところまで
副灯の点きしままなる秋の朝
銀杏のにほひたつ道キャンパスへ
糸瓜引くメスシリンダー土に据え
摘みきたるオクラ十指をはみ出して
彩雲を空に浮かべて芒原
茸狩お隣さんに誘はれて
冬浅し日かげたゆたふなまこ壁
教師はも十一月を長しとぞ
中年に鬱の気きざす雪催ひ
気障といふわけでもなくて懐手
雪囲ひよりこぼれ積む雪の嵩
石狩鍋おおいなる骨つまみ出し
なめるごと寄りくる波に千鳥翔つ
タグ付けて水槽に這ひ松葉蟹
水仙を目でなぎ払ひ口つぐむ
セーターのふわふわが胸つつみては
メリーとはいかな意味なるクリスマス
学生のある夜大原雑魚寝の体
子にはすつぱし紅愛しき甘露木
少年の競ふてのひら独楽まわし
春除目なるよ給与表上がり
少女らの息甘くしてちやつきらこ
おしやべりが一人加わり切山椒
初句会この人にこの新機軸

1 comments:

四羽 さんのコメント...

ひきがえる歩む素股を光らせつ
句界は印象派ブームというか、ふわきら的な「光」を詠むのが流行っている気がするが、ひきがえるの素股の「光」を捉えたのは力強く、心強い。

水仙を目でなぎ払ひ口つぐむ
立ち並ぶ水仙は心に安らぎを与えることはできず、むしろ苛立ちを強めてしまった。腹に呑みこまざるを得ない怒りもある。

少年の競ふてのひら独楽まわし
正月の独楽遊び、昨今半ズボンの子供というのはいなくなったが、この時ばかりは手袋も脱いで素肌のてのひらが踊る。

飾らない表現にユニークな着眼が宿った時、タフな俳句が立ち上がる。