2014-11-16

荒川倉庫 豚三十句 テキスト

豚三十句 荒川倉庫


蕨狩ゆくか豚決めかねてゐる
豚の裏庭の春菊どれも春菊
遅き日の豚の求める切符かな
客船の豚へ大きな春の月
あかるさは葉桜向かふみずの豚
ビールそれから化石談義の豚の夜
つながつてゐるげんのしようこと豚と
何もかも豚の死ののち枝払ふ
この国に梅干豚は本気なり
柿青きあたりに豚の秘密基地
だんまりの豚に葛切はこばるる
ただ一度のことなり豚が虹渡るは
馬鹿らしきまでの大夕焼が豚に
豚およそよけざるものと秋の蛇
もう豚は根釣の姿勢ととのへぬ
敗荷に豚乗るを賭けてもよいが
跳べば届く柿のことなど豚言ひぬ
豚に既視感渡り鳥ゆくときに
はるかな先に豚がまだ見ぬ榠樝の実
豚思ひつきり冬林檎投げる景
豚たどりつけざる冬の長い橋
或る豚の一日絵本みかんぬりゑ
どこをどうまちがへ豚の雪見舟
豚叫ぶときやや動く冬の石
初夢の豚逃げきつたかに思へたが
豚思ひとどまる先の氷柱かな
冬芽あかるく豚がくちづさむ歌
豚が身を投げて測りし春の闇
もうこれでいいのだ豚の花見酒
感謝して春の木馬を豚降りぬ

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