自由律俳句を読む 73 秋山秋紅蓼〔1〕
馬場古戸暢
秋山秋紅蓼(あきやましゅうこうりょう、1885-1966)は、山梨出身の自由律俳人。渡辺水巴の千鳥吟社を経て、井泉水に入門。終生、『層雲』の第一線作家として活躍し続ける。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。
海のかたへの影は月光に痩せている松 秋山秋紅蓼
海と月と松という、ひたすらに明媚な景が並べられた句。夜の逢瀬の砂浜での景と見た。ロマンチックである。
静かに星が砂のごと湧きいづる空 同
星の王子様を想像してしまいそうだが、海辺での景を詠んだものだろう。現代っ子でほどほどの大きさの街で暮らす私には、こんな空など夢のまた夢である。
征つたまま遠い月に便りがない月照る 同
秋紅蓼の生年と没年を見れば、日清戦争以降の外国との戦争を体験した人であったことがわかる。この句で征つた人は、どこへ旅立ったのだろうか。
夢の中の女が青い帯しめて来た朝 同
正夢というものか。青い帯に、なんらかの民俗学的な意味が込められているのかもしれないが、帯そのものをほとんど見たことがない私には、想像のしようもない。こうした句を詠んでみたかった。
松は疎林というほどの海が見えて浪立ち 同
海辺の松林での景だろう。昔よく、松林の中を走って砂浜へ駆け抜けていたことを思い出した。松があまり生えていないところでは、海の青さが透けて見えるのである。
0 comments:
コメントを投稿