2015-02-15

自由律俳句を読む 80  第三回全国自由律句大会〔2〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 80
第三回全国自由律句大会2

馬場古戸暢


前回に引き続き、第三回全国自由律句大会投稿句を鑑賞する。

拭いても磨いても老いていく鏡  富永鳩山

準大賞句。鏡と自身の両方に、「老いていく」の語がかかっているのだろう。どうにもこうにも、生きて行くほかない。

のれん押し上げて客は初夏の風  富永順子

先ほどうどんを食べてきたためか、この句ののれんもうどん屋のそれだと思う。初夏の風は、こちらの気持ちを明るくしてくれるので歓迎である。

小さな靴一つ残し春に立つ子  下瀬美保子

幼子がようやく立ったところと読んでもいいし、幼児だった我が子がひとりだちしたところと読んでもいいだろう。小さな靴が可愛らしくもあり、また、さびしさを助長しもする。

座布団枕に滝は見に行かず
  きむらけんじ

ホテルやスーパー銭湯にて、畳敷きの広場で休んでいるところを詠んだものと見た。滝よりも寝たいのである。横になりたいのである。

あれこれ忘れて生きたふりする  阿部美恵子

「生きた」とは、これまで生きてきたという意味か、それとも、現在進行形で生きているという意味か。おそらくは両方であって、きっと生きるとはこういうことんなんだろう。

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