【八田木枯の一句】
ねころべば血もまた横に蝶の空
西原天気
ねころべば血もまた横に蝶の空 八田木枯
血に縦や横があるのか。身体をめぐるのがその液体ならば、身体が横になれば、それもまた横になるのだろう。
この、あたりまえのような、なんかちょっとおかしいような12音が、座五の「蝶の空」でがぜんいきいきとする。
この人は、外で寝転んだのだ。ただ、一般的に「横」になったのではない。すると見えたのが「蝶の空」だった。
季語は、そのときどきの空気や心持ちで、読者を包み込むと同時に、事態をはっきりと確定する働きをもつ。
そこは畳じゃなかったのだ。「血」を「横」に感じたのは、蝶の空がそこにあったその瞬間のことであった。
俳句はあんがいこうした手順(驚くほどでもなく小難しくもないが、ていねいで周到な手順)、作者が親切に用意してくれた「はからい」によって、読者に届く、読者のものとなる。
掲句は第3句集『あらくれし日月の鈔』(1995年)より。
2015-02-22
【八田木枯の一句】ねころべば血もまた横に蝶の空 西原天気
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