【八田木枯の一句】
黒揚羽ゆき過ぎしかば鏡騒
西原天気
句集名『鏡騒』(2010年)にもなったこの句。
黒揚羽ゆき過ぎしかば鏡騒 八田木枯
美しい。
黒揚羽がずっととまっている鏡 樋口由紀子
木枯句の〈動〉と由紀子句の〈静〉。
樋口由紀子『容顔』(詩遊社/1999年)所収のこの句を、木枯さんは知っていたかどうか。それはわからないけれど、「鏡騒」という語を思いついたとき、きっと興奮したろうと思う。もちろんひとり落ち着き払いながらも、木枯さんの胸の中にある鏡が、どんな波よりも燦然と、どんなさざ波よりも細微に高速に揺れ、騒いだにちがいないと想像します。
さて、この「鏡騒」という造語は、これから世の中に広まっていくのかどうか。それはわからないけれど、
声あるが故に光を振りむけばここはいづこも鏡騒なり 小津夜景(【みみず・ぶっくす 28】 樹下のあなたへ)
美しい。
俳句以外の分野で広まるかもしれません。俳句では17分の5を「鏡騒」(by 八田木枯)が占めることになる。オマージュにしても、なかなか困難な処理になりそうです。「鏡騒」とは、ほんとうに強烈な語ですね。
2015-07-12
【八田木枯の一句】黒揚羽ゆき過ぎしかば鏡騒 西原天気
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1 comments:
♪じ~んせいは~ワン!ニャン!ピンチ~っ只今マイクのテスト中。ええっ、えへんおっほん、えー、ここでお笑いを一石(ちゃっぽ~んっ)。
ひめやかな恋の騒擾罪 by盗人撮聴連合
青き刃を茂みに隠し夏期講座
夏果てて洗面台の鏡騒
蜘蛛騒き美しき身の捩れゆく
電網怪々傷より漏るる鏡の声
昼寝覚十七歳の夢をみし
夏痩せの凍てし瞳と肌を恋ふ
ルームサービス薔薇一輪と蝉ステーキ
亜熱帯水蒸気満つ夜景都市
しづけさを泳ぐつがひの山椒魚
客室の外赤絨毯を蛭の這ふ
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