【八田木枯の一句】
いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ
西原天気
第6句集『鏡騒』(2010年)より。
いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ 八田木枯
ある意味シンプルな事柄がシンプルな筆致で作られています。
A いちにちが過ぎた。
B 障子に隙間がない。
AとB、どちらもあたりまえのことです。過ぎない一日はないし、障子というもの、たいてい隙間はない。
(時間もまた隙間なく流れるものですね)
二つのあたりまえが、定型のなかに巧妙に設計されています。
「障子に隙間なく」が副詞節として「過ぎぬ」という動詞にかかる。これは少なくとも散文的ではありません。定型ゆえの構造。
景色はどうでしょうか。
一日の経過のなかに置かれたのは、障子いちまい。それのみ。しかし、そこには、日の映り・移り・遷りがしっかりと含まれています。
それを前にした人(作者)は、畳の上にいます。どんな面持ちでいるのか、どんな気分でいるのか。それについては何も書かれていない。タブラ・ラサ(白紙)。障子のようなタブラ・ラサです。
巧妙に「シンプル」が設えられた句。
2015-11-08
【八田木枯の一句】いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ 西原天気
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