2015-12-27

週俳2015年7月のオススメ記事 太宰治のいる風景 小池正博

週俳2015年7月のオススメ記事
太宰治のいる風景

小池正博


太宰治は俳句と関係が深い。連句とはもっと関係が深い。

芭蕉の「古池や」の句について述べた『津軽』の一節はよく知られている。「どぶうん」ではなくて「チャボリ」というやつだ。

『富嶽百景』では「単一表現」の美しさを説いている。このころ太宰は「軽み」について考えていた。

『富嶽百景』の構成が連句的だという人もいるが、『晩年』の冒頭作「葉」ははっきり連句的である。「死のうと思っていた」で始まる小説。この小説は36の断章から構成されている。36といえば歌仙形式ではないか。

さて太宰の忌日が「桜桃忌」。柳本々々は忌日を読む」(本誌第429号)で「桜桃忌」を用いた俳句と川柳を目配りよく論じている。キーワードは「動的」「ぴょんぴょん」「行動」。

「やっとるか」
「やっとるぞ」
「がんばれよ」
「よし来た」 (太宰治『パンドラの匣』)

本誌第430号は特集「曾根毅句集花修を読む」。六人が句評している。曾根は鈴木六林男を師として俳句を学んだ。六林男の鞄持ちをしながらいろいろなことを吸収したという。そういう話を曾根から聞いたこともあり、田中亜美もどこかの俳句時評で書いていたと思う。

あと、関悦史の「BLな俳句」(第431号)がおもしろく、馬場古戸暢の「自由律俳句を読む・矢野錆助」(第428号)は自由律の現在を知る意味で注目したが、ともに連載の一部である。

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