【真説温泉あんま芸者】
駅ビルという辺涯
西原天気
駅を中心に街が発展する(広がる)欧州タイプの都市と違って、日本の駅は、街の中心にはない、といった指摘を読んだことがあるような気がします。
実際、古くからの繁華街は駅から離れていることが多かった。東京駅、京都駅、それから多くの地方都市(県庁所在地)。そういえば、比較的新しい街は、駅が中心です(新宿、渋谷etc)。
駅ビルやこの世の果のソーダ水 山田露結
この世の果て。駅ビルには、たしかに場末の感じがあります。
その地下の食料品売り場の端っこで飲むソーダ水。
不自然に赤いサクランボが沈んでいたりする〔*1〕。
ああ!
…。
駅ビルにもソーダ水にも、喪失感があります。
だいたいにして駅ビルという言い方が懐かしいではないですか。いまどきはJRががばって駅中事業を展開したり、私鉄が駅周辺を再開発したり。駅ビルは建て替えられて、カタカナ(アルファベット)の名前が変わっちゃったとか。
ソーダ水はいまどき純喫茶にもなくて、コメダ珈琲店くらいしか置いてないんじゃないか、とか。
そんなわけで、地理の辺涯、記憶の辺涯に、これらの事物は、不安定に揺れているのであります。
それにしても、です。あの真っ赤なサクランボには、「この世の果て」感がみなぎっておりますよねえ。じつに。
掲句は『彼方からの手紙』第10号(2015年7月7日)より。
●
ところで、子どもの頃に見ていた駅ビルもすっかリリニューアルされて、往時の面影はない。日本全国どこでもそうだろうと思う。けれども、なかには、時間の止まったような駅ビルもあるはず。ちょっと探してみると、名鉄東岡崎駅の「岡ビル百貨店」が、なかなかのもの。
≫http://deepannai.info/higashiokazaki-station-building/
ここもやがて取り壊されてしまうだろうから、マニアは急げ、岡ビル百貨店へ。
〔*1〕ソーダ水とサクランボについては、こちら。レモンスカッシュとサクランボについては、こちら。
0 comments:
コメントを投稿