週刊俳句2016年アンソロジー 60名60句
ケーキ詰めて箱やはらかし冬夕焼 今泉礼奈 第456号
皮衣中華屋BGMに泣く 椎野順子 第457号
蝌蚪の水国旗の端を浸しけり 曾根 毅 第458号
絵襖の金ンこぼすかに鳥鳴いて 中村 遥
第459号
」あるものだ過去の手前に未来とは「 川合大祐
第459号
寺なくて塔の残れる氷かな 篠塚雅世
第460号
椅子に木のやはらかさあり日脚伸ぶ 下楠絵里
第461号
春驟雨窓越しに島古びゆく トオイダイスケ
第462号
草笛を吹くとき肩のあがりやう 渡部有紀子
第463号
早春や製図に線の跡無数 永山智郎
第463号
陽炎へるまで試聴機を再生す 西川火尖
第466号
現代鳥葬 到達できぬ惑星を滅ぼし 髙田獄舎
第467号
人の声うばひとり花ふぶきけり 兼城 雄
第467号
ちちははのあるうち遊べ蓬原 満田春日
第468号
早春や新居の床に傷のあと 引間智亮
第468号
飛花落花地球はくす玉のかたち 工藤玲音
第469号
フォアボール続くマウンド白雨あと 益永涼子
第469号
石哭くや贄にたちこめたる霧を 九堂夜想
第470号
水紋に躓く蝌蚪のおよぎかな 淺津大雅
第470号
黒潮を望む岬の巣箱かな 広渡敬雄
第472号
雨を書く生まれてくる日に追いついて 野間幸恵
第473号
島中の鳥の集まる赤い空 こしのゆみこ
第476号
青林檎服をつかみしまま眠る 黒岩徳将
第477号
海の底見てきた夜の扇風機 小林かんな
第478号
ででむしや箱にしんなりふたつの性 嵯峨根鈴子
第479号
砂時計のくびれを落つる蛍かな 遠藤由樹子
第480号
幾万の毛皮が雪崩れ込んで来る 竹井紫乙
第480号
ボルゾイの匂へる梅雨の真昼なる 野口る理 第481号
軒錆びた看板晩夏旅先の 井口吾郎
第481号
やあと言うと田中は応えない雷雨 福田若之
第482号
川のみづ海のみづ夏ゆふべかな 西原天気
第482号
麦秋の少し遅れてゐる時計 村田 篠
第483号
祭より抜けて祭の音聞こゆ 進藤剛至
第485号
かたつむり世に無き地図を今ここに 加田由美
第486号
点滴のぽこと終はりぬ牽牛花 鷲巣正徳
第486号
あいさすと色鳥うすびへるしんき 田島健一
第487号
めりめりとしたるパラソル状の祖父 鴇田智哉
第487号
くらげ底につき心臓のはやさ 宮本佳世乃
第487号
蜩や森に大きな鏡立て 岡野泰輔
第488号
羊刈る羊の頸を股挟み 池田瑠那
第489号
鼻歌や長芋摺り過ぎてしまふ 冬魚
第489号
秋の蠅牛の眉間を打ちて過ぐ 金丸和代
第489号
露草を枯らして回るのが仕事 井上さち
第490号
無花果に向き柔道着滴りぬ 玉田憲子
第490号
仕立て屋に並ぶ色糸秋澄めり 岡本春水
第490号
ひとにあふための秋服吊し寝る 川又憲次郎
第490号
浜辺に吹くトランペットや曼珠沙華 嶋田恵一
第491号
スナックに秋鯖提げて来るをとこ 望月とし江
第491号
今日からは秋日の竹でゐてもらふ 秦 鈴絵
第491号
敬老日波をイメージしたダンス 竹内宗一郎
第491号
永遠に下る九月の明るい坂 今井 聖
第492号
雑貨屋開店小菊の鉢を出し並べ 小澤 實
第492号
台風に備ふる便器磨きをり 加藤静夫
第495号
塔といふ涼しきものや原爆以後 樫本由貴
第497号
月光に知る公園のかたちかな 野名紅里
第497号
傾くと露とは軽き眠りかな 福井拓也
第497号
蜻蛉に肉の貧しき躯かな 斉藤志歩
第498号
火恋し画集の海のみな日暮れ 平井 湊
第498号
犀として長寿 菜つ葉のみぞれ炊き 生駒大祐
第504号
(西原天気・謹撰)
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