2020-01-05

2020「週刊俳句」新年詠テキスト版

2020「週刊俳句」新年詠


初夢は長めにバルビツール系    ゆなな子
改元の空はそらいろ蒲団干す   矢作十志夫
徹夜明け実験棟の嫁が君      渕上信子
江ノ電や雀隠れに海光る      藤崎幸恵
年祝ぎに陀羅尼助丸派がゐたる   中山奈々
若菜野へ髪やはらかく束ねけり   岸本由香
元日やしつくりこない老妻の言   瀬戸正洋
初旅や成仏をせぬ母連れて    市川綿帽子
永久機関 世界史 大鷲の虚しきフォルム  宇井十間
切ないぞ鎌鼬との別れ際     竹内宗一郎
西暦はイエスの齢初日の出     笹岡大刀
うすがみをはぐやうにして初明り  鈴木茂雄
手掴みに食ふ数の子も新年詠    マイマイ
読初や♨にゆじるしとルビ     岡田一実
タマシイが貘枕からだだ漏れす 赤羽根めぐみ
日めくりの暦分厚く寝正月      KAZU
漂着の宝船敷く明日あれと    五十嵐秀彦
初日浴ぶ六十歳の握り鋏      玉田憲子
潜望鏡見え初凪の日本海    すずきみのる
元旦やR2-D2二代目中の人     赤野四羽
絵馬と絵馬交差している淑気かな   Fよしと
源流の水の凍らぬ淑気かな     広渡敬雄
島国になにはともあれ初日かな   平野皓大
元日の笑つて聞こえないラヂオ    中矢温
つぎはぎの陶器を満たす去年今年  飯田冬眞
ボルゾイを二頭連れたる初景色   大島雄作
の冬過度川二級俳人事件      中内火星
大いなるしじまめでたき大旦    杉田菜穂 
有史以前帰化せし仏の座を摘めり  谷口智行
轢死して神寂る蛇初薬師       森青萄
シートベルトよ初旅のすべすべの 西生ゆかり
海光の鳥から人に流れけり      曾根毅
初鳩の揃つて向ける肉の鼻 クズウジュンイチ
新年のやうにファシズム迎へるか  西川火尖
公園で遊ぶ父子やお元日      杉原祐之
屠蘇酌みしピアスの揺れてゐたりけり 齋藤朝比古
憂国や餅も具もみな煮崩れて      今朝
他事ながら我は女ぞ結び昆布    池田澄子
内職も間食も好き嫁が君      篠崎央子
ぢらいくわ に にて きけん なり よめがきみ  高山れおな
二日から遊べば父がさびしがる   福田若之
恵方道太き指弾く駅ピアノ     隠岐灌木
火を焚けば火の匂ひして初山河  青木ともじ
初景色山羊ゆつくりと食べ尽くす  岡田由季
元日の銅像 おどりだすこども     八鍬爽風
読初めの憲法前文愛の文字    吉平たもつ
枕よりはみ出してゐる宝船    森脇由美子
少女らにほのかな野心初御籤     髙木小都
斎の波を鎮めて初日の出      石原日月
宿場町過ぎて雑煮の餅売れり   三島ちとせ
乗り初めのベトナム人に囲まれる 小林かんな
歌姫の口パクなれど嫁が君     犬星星人
嫁が君つぼうちねんてんアンパンマン 大井恒行
楪やわけても手首あたたかし    山口昭男
一年に一度の道を二日かな     柏柳明子
初夢やふらっとふらふら弱視とか  阪野基道
子や神の糞もて黄金食ならめ    九堂夜想
座り初む首を支へて初御空    西山ゆりこ
転居先不明の年賀二枚ほど     月波与生
かへりみて築地なつかし嫁が君   小川軽舟
去年狂気今年正気であれ巨人     橋本直
飛行機の眼下かたむく雑煮椀     浅沼璞
新年の(火を貸してください)枯野  高梨章
鳩サブレのふくよかな胸福寿草    金子敦
果物に濡れて包丁始かな     月野ぽぽな
門礼のやりとりの脇通り過ぐ    柘植史子
荻窪を人は忘れて二日粥      生駒大祐
手裏剣のごとくつらなる初神籤  村上瑠璃甫
去年に敷くしとねへ吾をかへしけり  神保と志ゆき
姉様と駅に別れる二日かな     阪西敦子
去年今年雪平の柄のゆるみそむ   斎藤悦子
元旦の髪ふはふはと風呂屋出づ   中西亮太
リフティング落とさぬ墓守ゐて三日  藤尾ゆげ
トーレコよチ治明けましておめでとう 野口裕
ノンベジターリー咖喱五種盛りお元日 村越敦
大欠伸して淑気に味のようなもの  武智しのぶ
日の当たる山へ近づく初詣    津川絵理子
高度一万機長のハッピーニューイヤー しなだしん
雪原にゐたよ末尾は2020     小川楓子
湯気立や築山めける榛名富士   前北かおる
あらたまの空き地に荒き水仙花   堀本裕樹
本能に責任転嫁初明かり      岡村知昭
コロ助の刺繍を胸に初仕事     瀬名杏香
銭湯にあたらしき富士四方の春  宇志やまと
冬星のひとつ終焉近づきぬ     常盤 優
火ひとつ燃えてをるなり去年の闇  ハードエッジ
元日を眩し眩しと泣くこども    箱森裕美
初鏡まづは心を整へて       内村恭子
正月の凧にあずけている利き手    藤田俊
去年今年やはらかく張る犬の腹  細村星一郎
正解を探つてゐたり初御空     鈴木健司
借りもののナイフ俎始かな     千野千佳
正月のばば抜きは真剣にせよ      龍翔
目の端に机の端に去年の文     黒岩徳将
夕映にねむる元日箒かな      彌榮浩樹
去年今年伯父の動かぬ左側     紀本直美
鳥総松明るい方へ人が寄り     依光正樹
水鳥や映りて音のない景色     依光陽子
買初や携帯電話翳したる     望月とし江
御降の音ふくらみて耳の中    松本てふこ
正月も友達とゐて犬もゐる    宮﨑莉々香
火が匂ひ灯の香りたる宵の年    下坂速穂
池へ来る鳥を数えて初詣     岡本飛び地
新年の挨拶上手き子供かな   小久保佳世子
刻々と動く地球や初日の出     高橋透水
I love you, earth, you are beautiful 去年今年 雪我狂流
目瞑りて青き地球の初湯かな    松野苑子
御鏡の縮むる音か部屋の奥     大西主計
喧嘩独楽それぞれひかり溢しつつ  田邉大学
ナショナルの電気毛布をキョンの鳴く 鴇田智哉
初星の下に灯油を汲みてをり    若林哲哉
黒豆や孫たちまちに美中年     楠本奇蹄
三日世界のトレンドはworld war 3   関悦史
さう言へば人形町が初句会     西村麒麟
手は鳥を知らずつめたい紙の束   山岸由佳
若僧の筆つつましき二日かな    森崎公平
初日拝むベランダ可燃ごみの袋      近恵
元旦のわたしのはうを向く時間  宮本佳世乃
嫁が君『The Annotated Alice(詳注アリス)』を横断す 北川美美
あらたまの令和二年のつるっつる  鈴木牛後
凧揚の父すつ転ぶ汀かな       中嶋憲武
初夢の華僑の街を押し通る      大塚凱
はしたかのすずしろに露滂沱たり  田中惣一郎
経糸の牽固くして機初め      仲田陽子
あらたまの鼠の出家する草紙   石地まゆみ
飴色玉ねぎの色濃くて四日    姫子松一樹
ことごとく余白と知りぬ初明かり  小津夜景
渋滞を抜け初晴の渚まで       森瑞穂
なんなりとけがもしませうはつごよみ  琳譜
読初に二十歳の頃の愛読書     小池康生
輪飾のありぬ空家と思ひし家     林雅樹
消防団詰所にあかり年新た    大井さち子
門松のうしろにまはれるか今さら  山田耕司
鉄橋の赤の錆びゆく初御空      常原拓
年立つや鬼も笑ひし鬼ごつこ    青島玄武
まつさらな雪撫づるごと初日記    佐復桂
もう来ない人のデスクの古暦    小林鮎美
ちちははの鼻梁麗し初日の出    近江文代
歳取の古き洋酒の栓を抜く     島田牙城
肩揺らすスマトラ虎の淑気かな  ごしゅもり
暗黒の海辷り来て宝船       堀田季何

正月五日その場でゆるく回る鴨   上田信治
頼まれて門松とゐる動物園   いなだ豆乃助
 

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