句と句、自由につながる
三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』
西原天気
三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』はB6判・全104ページに1000句が並ぶ。あとがき(三島ゆかり)によれば、両氏が交互に句を投げ合う、いわば句の掛け合いのようなものは2016年2月にツイッターで偶発的に始まった。以後、2018年3月まで断続、両氏500句ずつ1000句に至ったところで、この本が編まれた。つまり、自選などは施されていない模様。
「しりとり」と銘打つものの、下の句を受けて、といったルールはなく、前句とのつながりは自由自在。それゆえ「フリー」と冠されているのだろう。
例えば、
スマホ見るひとの行列薄暑光 ゆかり
から、
まほろばにマルコ・ポーロや夏はじめ 奈々
は「まほ」の音でつながる。
そこから、
茉莉花や裏に穴ある丸ぼうろ ゆかり
は、音は音だが、すこし凝っている。マルコ・ポーロ→丸ぼうろ。
さらに、
うろ覚えなる枝豆のみどりかな 奈々
は、「穴」から「うろ」へとつながる。しりとりと言いつつ、連句の要素も含まれるようだ。
一句一句を味わう(句集や連作のように)のとは別に、句の《つながり方》が楽しめる。その意味では、どのページを開いてもよさそう。1000句はいかにも膨大だが、どこから読み始めてもいい、となれば、心がラク(句集って、なぜかアタマから読んじゃう、読まされちゃう。拘束はないはずなんだけどね)。
俳句には、いろんな楽しみ方がある。つくるにも、読むにも。そう思わせてくれる本。
なお、書名にある「二句二円」は、「ひとつの句の世界を円としたとき、ふたつの句を並べるとどうなるか。数学の授業で習った集合のベン図のように、ふたつの円の交わりには共通の要素があるかもしれないし、あるいはレオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』のようにふたつの色が重なり合って、驚きとともにあらたな色が生まれるかもしれない」(三島ゆかり「あとがき」)といったアイデアに由来するとともに、1000句を収めたこの本の定価は1000円。1句につき1円、2句につき2円、というわけで、なかなか気がきいている。
三島ゆかり・中山奈々『フリーしりとり 二句二円』(2020年2月)/みしみし舎
問い合わせ≫https://twitter.com/officemisimisi
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