2020-05-24

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 taco「きらら」

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
taco「きらら」


憲武●先週がcondition greenでしたので、にっぽんの伝説のバンドシリーズ第二弾ということで、tacoで「きらら」です。


憲武●歌詞がほとんど聞き取れないんですけど、これ、放送禁止用語の歌詞で、レコードは発禁になってしまった曲です。

天気●1983年の日比谷野音。この頃、パンク全般、あまり聞いていなく、日本のパンクはまったくでした。

憲武●僕もパンクはセックスピストルズとかラモーンズ、わが邦ではアナーキー、INUくらいしか聴いてないです。マイクに寄っかかってるというかぶら下がってるヴォーカルは町田町蔵、現在の町田康です。

天気●作家デビューの10年ほど前ですね。ミュージシャン時代をなんとなく知ってはいましたが、実際に歌っているところを見るのは初めてです。思ってた以上に危ないボーカリストですね。

憲武●はい。鬼気迫るものがあります。このバンド、町田町蔵を初めとして、故遠藤ミチロウ、坂本龍一なんかも参加してます。そして週刊俳句の草創期に「暮らしの歳時記」というコラムを不定期に寄稿していた故山本勝之も山本土壺としてサックスで参加してますね。この日は出てなかったようですが。

天気●山本さん、たしかセルマーを持ってましたよ。

憲武●セルマーを? 初耳です。

天気●吹けなかったと思うけど、まあ、ちゃんと吹けたら、それはもうパンクじゃないという考え方もあった。

憲武●山本さんのマイルス・デイビス風おならなら知ってます。

天気●あはは。

憲武●●tacoの演奏というより、アンダーグラウンドなパフォーマンス的色彩が強いのは、『HEAVEN』という雑誌を編集していた高杉弾のもともと持っていた構想によるものでしょうか。妙にシラッとした雰囲気が漂ってます。

天気●『HEAVEN』の関係者は、いま俳句世間の知り合いに複数いて、酒宴でたまに出てくる昔話が面白いですよ。憲武さんも山本さんから聞いたことがあるかもしれない。まあ、でも、時は流れる。流れた。オール・シングス・マスト・パス。

憲武●80年代初頭くらいまでは、まだアングラな雰囲気というものを引きずっていたように思えます。意味とか秩序とか、そういったものを一切拒絶するようなエネルギーと言いますか。最近は変に清潔な感じの時代になってしまって、抜け穴の無い息苦しい時代ですね。


(最終回まで、あと855夜)
(次回は西原天気の推薦曲)

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