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2026-07-26

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】マイケル・ジャクソン「Smooth Criminal」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
マイケル・ジャクソン「Smooth Criminal」


憲武●時節柄いまはなんとなくマイケル・ジャクソンとゆう感じですので、Michael Jackson「Smooth Criminal」です。


憲武●この曲はアルバム『Bad』(1987)に収録されてまして、シングルリリースは1988年です。作詞作曲はマイケル・ジャクソンです。

天気●「人類史上最も売れたアルバム」といわれる『スリラー』(1982)の次作ですね。レコードを買ったことはないし、きちんとは聴いていませんが(わざわざ聴かなくてもどこかしこで鳴っていますからね)、音的にさらに洗練されて、クインシー・ジョーンズ・プロデュースの完成形みたいな印象。

憲武●「Off The Wall」からのクインシー・ジョーンズ3部作といってもいいかもしれません。タイトルの「なめらかな犯罪者」がよくわかりません。意訳して「手際のよい」という訳を見たことありますが、無理くりのような感じもします。歌詞もよくわからないロックな歌詞です。

天気●物騒な曲名、物騒な歌詞。

憲武●歌詞を聞いていると、空耳の症状を引き起こします。冒頭の「茶、宿直」はすでにタモリ倶楽部の空耳アワーで有名です。

天気●それ、歌詞を聴くというより、声を聴いていると、ですね。たしかに、あの空耳アワーの名作なしには語れない。

憲武●はい。空耳アワーではそのあと「朝からちょっと運動、表参道赤信号」もありましたが、僕には「朝から弁当、和田さんと赤信号」と聞こえます。ところで、マイケル・ジャクソンって、中毒性があると思います。先日、妻と映画『Michael/マイケル』を観てきたのですが、妻は当初あまり関心なさそうで「見てもいいよ」的反応だったんですが、観終わってからは毎日YouTubeでマイケル・ジャクソン観てました。

天気●魅力的な要素は多いんでしょうね。その映画は見る予定はないですが、『THIS IS IT』(2009)は良い音響で観たせいもあって、すごく良かった。

憲武●そうでしたね。またやらないかなあ。ダンスとかシャウトもですね。中毒性。家でついダンスの真似事などしてシャウトしてしまいます。外では恥ずかしいので、やりませんが。マイケル・ジャクソンはチャップリン、フレッド・アステア、ブルース・リーなどの影響を確かに受けてると思える動きが見られます。それらがマイケル流にアレンジされてて格好いいんです。

天気●ぎっくり腰に気をつけてくださいね。

憲武●い、それはもう。マイケル・ジャクソン亡くなって17年。飼っている三毛猫も生まれてから今夏で17年。三毛猫はマイケルの生まれ変わりではないかと思っています。 

(最終回まで、あと555夜)

2026-07-19

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】maromaro「Moonlighting」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
maromaro「Moonlighting」


天気●またまたヘンな人を見つけちゃいました。maromaroといってポーランドの人です。


天気●仮装系のミュージシャンはテクニカルな人が多いんでしょうか。アイバニーズ(日本のメーカーです)のギターを達者に弾いてはります。

憲武●かっちょいーギターですね。途中に登場するメガネの男性がmaromaroですね。ちょっとオカルト映画っぽい味付けしてます。銀色の仮面がグッドです。

天気●何の仮面なのか、よくわかりませんが、三日月? 不健康で夜なかんじの音楽です。ポーランドって、よく知らないのですが、土着・民俗っぽさも感じる。まあ、おもにこの動画の見た目から来る印象なんですが。

憲武●ポーランドといえばバレーボール強いですね。先日のバレーボールネーションズリーグ(女子)での激闘が鮮烈です。ユリタ・ピアセツカ美人過ぎます。行ってみたい国の一つです。

天気●きっとYouTubeからの音楽発信がさかんになって、そこで目立つには、これくらい振り切ってやらないといけなんでしょう。ヘンテコな人が大好きなので、大歓迎です。

(最終回まで、あと556夜)

2026-07-12

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】加山雄三「白い砂の少女」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
加山雄三「白い砂の少女」


憲武●夏のイメージの人って、結構いると思いますが、この人もその一人ではないでしょうか。加山雄三「白い砂の少女」。


憲武●作詞は岩谷時子、作曲が弾厚作です。弾厚作は加山雄三のペンネームですね。4曲入りのシングルだったかと思います。バックの演奏はランチャーズでしょう。

天気●独特ですよねえ。好きでもないし、興味もないけど。歌謡曲とも言い切れない。バタ臭いとも言い切れない。アレンジ的には、裏メロのエレキギターがただただひつこくて(弾かないところをつくるという発想がないのか?)、音やフレーズがちゃっちい。

憲武●ランチャーズって、本業は東宝の俳優の人たちですからね。そのひつこいところ、今ふと思ったんですが、ウエスタン風味にしてるのではないかと。加山雄三って、小さい頃から「君といつまでも」と「お嫁においで」くらいしか聞いたことなかったんですが、高校1年のバレー部の夏合宿にOBの先輩が一人来てて、朝も夜もずっと加山雄三をラジカセで聴いてたんです。昼は練習でヘトヘトで、短い休み時間も加山雄三。

天気●地獄じゃないですか。ふつうはトラウマ的に嫌悪するのでは?

憲武●そのOBって、元部長でわりとみんなから親しまれてる人だったんです。だからみんな仕方ないかな、みたいな感じでした。最後の夜の余興では、みんなで「蒼い星くず」を歌ったくらいで。その頃って加山雄三がドラマの主題歌だったか「僕の妹に」って曲で再ブレイクしてたんです。だからだったんでしょうか、そのOBの先輩は6月の県大会予選で負けて、バレー部引退したあと応援団作っちゃうくらい男気のある人でしたので、まあファンだったんでしょうね。

天気●悪気はなかったのですね?

憲武●そうですね。単に加山雄三が良いから聴いてるっていうのは、わかりましたから。ずっと聴いてたので自然に覚えちゃって、わりと気に入って、エアチェックも随分してランチャーズの頃のインストなども聴きまくりました。でも不思議とアルバムなどには手を出さなかったんですね。カセットテープで済ますという。

天気●カセットテープは流行が再燃らしいですよ。映画『PERFECT DAYS』や『カセットテープ・ダイアリーズ』を観ると、カセットデッキが欲しくなります。

憲武●それ、今考えてるんです。大学入ってから黒澤明とか若大将シリーズのオールナイト上映観て、俳優としての加山雄三も好きでしたね。加山雄三の歌はなんか飽きないんです。

天気●相性がいいんでしょうね。

憲武●アルバムを買おうと思ってます。ランチャーズの頃の「恋は紅いバラ」っていうアルバム。最近よりもやはり若い頃の加山雄三に惹かれます。

(最終回まで、あと557夜)

2026-07-05

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ゾー・アンバ「デッドエンド・ストリート」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ゾー・アンバ「デッドエンド・ストリート」


天気●これまでいろいろ音楽を聴いてきて、世の中には、ほんと、いろんなのがあるなあ、と、あたりまえすぎる感想を言ってしいますが、ポップ・ミュージックはそれぞれ「売れたがっている」「ウケたがっている」。いわゆる売れ線を狙う結果、ジャンルはいろいろ、セールスポイントもいろいろではあっても、なんだか似たように、そこそこの完成度、そこそこ気持ちよくさせる音楽がいっぱいある。これは悪い意味ばかりではなくて、聴き手への媚び、サービス精神がポップ・ミュージックの魅力のひとつでもあるわけです。という気分のときに、この歌が、「なんかいいなあ」と。長い前口上のわりに、「なんかいいなあ」もないもんだとは思うのですが、ゾー・アンバ「Dead End Street」という曲です。


天気●カーラジオでこれが鳴ったとき、パンク味のある歌だなあ、と。でも、当時のパンクじゃない。節まわしのところどころで、奄美とか沖縄を感じたりで不思議でした。

憲武●夏っぽいですよね。歌だけ聴いてると、パンクだと思います。節まわしのちょっとした間が、南国っぽいんじゃないかと思ったりもします。

天気●調べてみると、テネシー州出身で、フリージャズのサックス奏者として実績がある人。サックスも聴いていたい方は、「Zoh Amba sax」とかYouTube検索すれば、いろいろ出てきます。バリバリのフリージャズです。それが、ギターを持って、歌い始めた、ということらしい。

憲武●フリージャズから出発してる人なんですね。歌い方が、もっともちゃんと歌えば歌える人だと思いますが、否定とか解体の精神が根底にあるんじゃないかと思える歌い方ですよね。

天気●他にない感じ、というのは、やはりいいです。まったくないといえなくても、他にいっぱいある、というより断然いい。俳句も同じでしょ? ま、それは置いといて、ユニークはだいじです。

憲武●唯一無二とか独自性ですね。一回壊してみてから始まるような。

天気●歌いっぷりも面構えも、ふっきれたところがあって、すとんと聴き手に届く感じ。音は凝ってないけど、ぶっきらぼうな音も、いいものです。

憲武●総体の印象に繋がるバランスは大事です。

天気●曲は、袋小路の閉塞感みたいなことを歌っているのか、歌詞自体はシンプルです。

憲武●シンプルさって、心に残りやすい感じします。

天気●メインストリームをめざすのではなくて、そんなもん、どうでもいい、というスタンスは気持ちがいいものです。

(最終回まで、あと558夜)

2026-06-28

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】原田真二「サゥザンド・ナイツ」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
原田真二「サゥザンド・ナイツ」


憲武●週刊俳句1000号ということで、おめでとうございます。

天気●ありがとうございます。

憲武●第1001号の千夜一夜は原田真二「サゥザンド・ナイツ」です。


憲武●シングルリリースは1978年。作詞松本隆、作曲原田真二です。松本隆とのコンビの最後の曲ですね。原田真二というと、1977年秋の華々しいデビュー、「てぃーんずぶるーす」「キャンディ」「シャドー・ボクサー」とデビュー3ヶ月連続シングル発表、その3曲すべてオリコンのチャート入りするという、驚天動地の才能の出現でした。

天気●テレビとかでふわっと見たことがあるにはありますが、パーマ頭くらいしかほとんど記憶や印象に残っていないです。

憲武●そうでしたか。この曲、シングルとしては「タイム・トラベル」と「アワ・ソング」の間に発表された曲で、チャート的にもあまり振るわなかったと記憶してます。

天気●適度にメロディアス、適度にリズムがある、ということで、引っかかり(いわゆるフック)がないせいかも。

憲武●なるほど、フックか。この方広島出身で、同じ広島出身の吉田拓郎を憧れて影響も強く受けてました。でもその影響とはまったく方向の違う楽曲を制作して、フォーライフの3,000人のオーディションで吉田拓郎に見出されて、あっという間にデビュー。そして大ヒット。天才です。

天気●広島、吉田拓郎、フォーライフ? そのへん関連も初耳、というか知らずに過ごしてきました。

憲武●そうでしたか。最初に原田真二を見たのは「ぎんざNOW」っていうせんだみつおとか出てたテレビ番組です。初見、かなり好きだと思いましたね。ピアノ弾きながら歌ってて。原田真二が出て来て、そのあといろんなロック系のバンドとか出て来て、なんか音楽業界変わったなっていう印象ありましたね。それまで歌謡曲主流でしたから。テレビもラジオも。

天気●70年代後半、歌謡曲にロック成分が入ってきたのは、沢田研二の功績が大きいと思うんですが、いわゆるニューミュージックのヒットも同じ流れだったのかも。

憲武●そうですね。そういえば。「勝手にしやがれ」が1976年でしたか。原田真二は曲間にシャウトとかするんですけど、それがポール・マッカートニーっぽくて好きでしたね。なんかこうウイングスを意識してたような感じありますね。

天気●うん、ブリティッシュ・ポップな感じが、するといえば、する。

憲武●エルトン・ジョンも好きだったみたいです。最近はあまり情報が流れて来なくなりましたが、どういうつながりなのか八王子の小学校の二つ、校歌作ったり気になる存在です。

(最終回まで、あと559夜)

2026-06-14

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】サリー・ベイビーズ・シルヴァー・ダラーズ「I Got No More Tears Left to Cry」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
サリー・ベイビーズ・シルヴァー・ダラーズ「I Got No More Tears Left to Cry」


天気●夏の夕方、気持ちいんですよね。早く梅雨があがってほしいです。なので、戸外での気持ちのいい演奏を。サリー・ベイビーズ・シルヴァー・ダラーズという人たちです。


天気●ニューオリンズの新しいバンドです。ヴォーカルの人、なんか濃いです。ルックスも歌唱も。煮込みすぎたスウプみたいに。

憲武●なんだか懐かしさを覚える顔立ちですね。半世紀ほど前の日本で、割とよく見たタイプのルックスのような。

天気●おもしろい編成。管3本が特徴的で、ほぼアコースティックな音。ライブハウスの映像もあるのですが、きほん、こういう音です。

憲武●なるほど、夏の夕方にはぴったりです。

天気●この曲、誰もがどこかで聴いた感じがしますよね。50年代のロカバラード的なメロディーとリズム。憲武さんや私の世代ではビートルズの「オー・ダーリン」を思い出す。あれが、そもそも古いロカバラードへのオマージュというか引用。ポップ音楽はぐるぐる年単位、数十年単位で回ってます。

憲武●最近はアメリカも日本もヒップホップばかりで、つまらないんですが、きっと誰かやってますよね。

天気●最近、ちょっと「どっかへ行きたい」病なんです。ニューオリンズとは言わず、小岩でもどこでも、ああ、出かけたい。

(最終回まで、あと560夜)

2026-06-07

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「ブルー・シャトウ」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「ブルー・シャトウ」


憲武●勤務地が八王子なんですが、ジャッキー吉川が八王子出身と知って、それ以来親近感を持ってます。ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「ブルー・シャトウ」。


憲武●かなり有名な曲ですので、知っている方も多いと思われます。作詞は橋本淳、作曲井上忠夫、これは旧芸名でのちの故井上大輔ですね。作詞の橋本淳は先月の21日に亡くなってます。ブルー・コメッツのデビュー以来ずっと、関わってきてました。「雨の赤坂」という曲も気に入ってます。

天気●井上忠夫/井上大輔は、フルートを手にもっぱら歌をうたう人というイメージでしたが、作曲家としての仕事が大きいのですね。リストになっているのを見て、あらためて知りました。

憲武●アニメ主題歌も結構手がけてます。1979年に出た「ダンシング・シャドウズ」というソロアルバムもいいです。

天気●幅広いですね、作曲家・音楽家として。

憲武●はい。この曲が流行った当時、わが邦はGSブームで、この曲の大ヒットによって他のGSの曲が歌謡曲化の傾向を深めていったと思ってましたが、Wikipediaによると、井上忠夫は「外国のリズムと日本のメロディの新しい組合せを考えた」と言っていたそうです。何か新しいことをやろうとしていたんですね。

天気●そのへんのチャレンジのことはよくわかりませんが、エイトビートに歌謡曲の伝統的なメロディが乗るのが、当時のグループサウンズで大きな部分を占めていた印象があります。

憲武●そうですね。そこがヒットの要因だったと思いますし、またつまらないところでもあったと思えます。またこの歌は替え歌も有名ですね。歌詞の単語の語尾に「とんかつ」とか「ニンニク」を付けるといったものですが、地方によって細部が変わっていたりしたんでしょうか。

天気●「森トンカツ、泉にニンニク、かーコンニャク、まれ天麩羅♪」ね。それがこの曲の大部分を占めてますよ、私などは。それなしには聴けない。

憲武●それ、僕もかなり刷り込まれちゃってます。ブルー・コメッツといえばビートルズ来日の折に前座として武道館のステージに立っていますが、その時のことをポール・マッカートニーが「ビートルズアンソロジー(リットーミュージック 2000)の中でこう語ってます。「僕らの前座におもしろい日本のグループが出ていた。この当時は、日本人はまだロックン・ロールってものをよくわかってなかった。今じゃすっかり理解してるけどね。そのグループは"ハロー・ビートルズ!ウェルカム・ビートルズ!"とかいう歌を歌ってたーーロックン・ロール的にはかなりダサいけど、すごく嬉しいことではあるよね。僕らのステージもすごくうまくいった」。ポール・マッカートニーに「おもしろい」って言われるなんて、スゴイですね。

天気●「ロックン・ロール的にはかなりダサい」という部分が、歌謡曲成分なんだろうと思います。


天気●おお! 英語歌詞だ! 琴から入るところは、日本人レスラーが米国で活動するとき、歌舞伎メイクする感じですね。

憲武●超受けるんですけど。橋本淳の訃報によって、この曲を思い出したってこともありました。ご冥福をお祈りします。

(最終回まで、あと561夜)

2026-05-31

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ「The Love I Lost」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ「The Love I Lost」


天気●定期的にこういうのを聴かないと、からだに変調をきたすという体質なので、聴きますね。ハロルド・メルヴィンとザ・ブルー・ノーツ「The Love I Lost」(1973)です。



天気●YouTubeで検索すると、TV番組(って書いたほうが親切なんですよね、若い人には)「ソウル・トレイン」とか、動いてる動画も多いけど、例によって短く切れてしまう。アルバムのフル・ヴァージョンももちろん聴けるんですが、それだとジャケットの静止画なので、この音はスタジオ録音、絵をいろんなとこから採ってきたのを選びました。音と動きが微妙にずれているところが、なんだか思い出っぽくて、意外に切なく泣けます。

憲武●音と動きがずれているところもいいんですが、色調もまたいいですね。35ミリフィルムの味わいです。

天気●このグループ、フィラデルフィアの、いわゆるフィリー・ソウル。キャリアは60年代からと古いのですが、人気が出たのは、のちにソロ歌手としても活躍するテディ・ペンダーグラスが加入した1970年からです。この曲も、シャウトがふんだんなリード・ヴォーカルを聴かせているのはテディ・ペンダーグラスです。

憲武●この歌声は聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。わが邦では「Do Me」が大ヒットしましたね。私は80年代初頭のソロアルバムをよく聴きました。

天気●ソウルによくある失恋ソング。エレキピアノから始まって、ギターのシンプルな単音メロディが重なる。ヴィブラフォンが入って、そこからやっとドラムとベース。そこにオルガンの和音がぎゃおーんと入る。イントロにたっぷり時間をとってるとこも好みです。

憲武●はい。冒頭のエレキピアノの音、泣けますね。一体いつ始まるんだって感じのイントロがワクワクしたもんです。

天気●サビが先に来る構成もうれしい。Aメロでせつせつと失恋を歌いあげて、またサビに。失恋ソウルは、こうでなくっちゃ、という王道パターンです。

憲武●踊れる失恋ソングって、いいですね。

天気●ああ、身も心もすっきりしました。


(最終回まで、あと562夜)

2026-05-24

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】MIKI「ca pik un peu quand meme」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
MIKI「ca pik un peu quand meme」


憲武●半年に一度、下北沢の小さなバーでDJをやらせてもらってるんです。この間あったんですが、その時仲間のかけた曲でよかった曲があるんで、それをアップします。MIKIで「ca pik un peu quand meme」。


憲武●このMIKIっていうひと、MIKI Duplayとも表記されたりしてますが、フランス系韓国人のようです。去年、「Industry Plant」というファーストアルバムを出したばかりとか。

天気●いいですね。軽やか。ちょっと切ない感じもある。変な言い方ですが、若い人の日記的エッセーみたいな味わい。

憲武●初めて聴いて、即いいなと思いましたので、その場ですぐにShazamに取り込みました。下北沢のバーで聴いたとき、うすいピンク色の情景がパーっと広がって、心はずむ心優しい感じになりました。

天気●へえ、「Shazam」って初耳です。調べてみると便利そう。

憲武●たいへん便利で重宝してます。PVを観ると、アニメが歌詞の世界を表しているようですね。孤独や、友人と恋人の間とか、別れ、最後に男性がフラれる、などが象徴的に描かれているんでしょうか。歌詞がフランス語なのでよくわかりませんが。

天気●ネットの翻訳によれば、「もう6週間以上、自分ひとりのための食事をつくってる」とか、「ドアベルの音がしたと思ったら、いつも下の階」とか、一人暮らしの「あるある」? タイトルは「ちょっとチクチクする」とか「ちょっとイライラする」みたいな翻訳案が出てきます。いずれにせよ、日常! な歌。

憲武●なるほど。pikが「チクチク」ということなんでしょうか。音楽を聴いて、一瞬で好きか嫌いかがわかるって、どういう感覚なんでしょうね。DJの仲間たち(大学時代の同級生、映研の後輩など)は、みんな音楽の好みがわりと共通で、信頼関係もあるんですが、そう言ったことが影響してくるような気もします。今回は相性がよかったということでしょうね。

(最終回まで、あと563夜)

2026-05-17

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】小野リサ「Look to the Rainbow」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
小野リサ「Look to the Rainbow」


天気●前回のボサノヴァからの流れで、小野リサ。大好きなスタンダード曲「Look to the Rinbow」を。


天気●日本でボサノヴァといえば、この人。みたいな感じがあって、じっさい、小野リサほどボサノヴァ向きの声質はないとまで思ってるんですが。今回は、ボザノヴァ・アレンジではなく、それでも、いい雰囲気は出してます。

憲武●柔らかい雰囲気に包まれます。小野リサはファーストアルバムを発売日に買って以来、すっかりとご無沙汰してました。

天気●ちなみに、ブラジルでボサノヴァと言えば、この人(というのかどうか知りませんが)、アストラッド・ジルベルトは、もろボサノヴァでこのスタンダードを演ってます

憲武●やはり、と言いますか、既にカヴァーしていたかという感じです。

天気●「Look to the Rainbow」という曲は、1947年初演のブロードウェイ・ミュージカル『フィニアンの虹(Finian's Rainbow)』の曲。以来、カヴァーの多い曲です。初演の音などは残っていそうにないですが、フレッド・アステアとペトゥラ・クラークのが、その雰囲気を伝えてそうです

憲武●この映画はフランシス・フォード・コッポラ監督なんですね。ミュージカルも撮っていたんですね。

天気●小野リサに戻りましょう。ゆったりとしたテンポで、メロディがじわっと染みます。後半、シンガーズ・アンリミテッドばりのコーラスが加わり、こちらの胸を満たしていきます。

憲武●わりと長い曲ですけど、すぐに終わってしまう感じです。小野リサ、遠ざかってましたけど、やはりいいですね。

天気●生きづらさを感じたときこそ、虹を見て、虹を思って暮らしていきましょう、というこの歌、なかなかそうはいかないけれど、指針にしたいと思います。

(最終回まで、あと564夜)

2026-05-10

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】エリス・レジーナとトム・ジョビン「Águas de Março」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
エリス・レジーナとトム・ジョビン「Águas de Março」


憲武●立夏ですので夏っぽい曲を。Elis Regina & Tom Jobinで「Águas de Março」。


憲武●この曲は、いろいろな人にカヴァーもされ、本人たちのヴァージョンを含め、さまざまなヴァージョンの存在する曲です。

天気●大名盤の1曲めですね。ほんと軽やかで親密さがいい感じ。

憲武●作詞作曲はアントニオ・カルロス・ジョビンで、トム・ジョビンは別名ですね。本名はとても長いので愛称のようなものなんでしょうか。タイトルは「三月の水」という意味で、夏の終わりの情景が描かれています。南半球のブラジルでは三月が夏の終わりなんですね。

天気●晩夏の水ってわけですね。

憲武●水が複数形になってますので、「三月の雨」と訳されているタイトルもあります。歌詞はほとんど名詞が並んでます。五木ひろしの「よこはま・たそがれ」の「よこはま  たそがれ  ホテルの小部屋  くちづけ  残り香  煙草のけむり」みたいな感じなんですね。

天気●ネット上で「棒 石 道の終わり 切り株の残り ちょっとひとりぼっち ガラスのひとかけら♪」と歌詞の部分が見つかりました。なるほど。これを掛け合いで唄う。

憲武●エリス・レジーナは「エリス&トム」というアルバムでしか知らないんですが、今年三月に「エリス&トム--ボサノヴァ名盤誕生秘話--」という映画が公開されてまして、チェックしてましたが見逃してます。現在は阿佐ヶ谷のmorc阿佐ヶ谷で15時の回一回だけ上映されてるようですので、ここチェックですね。

天気●エリス・レジーナは当時のブラジルで国民的大歌手だったみたいですよ。ラジオで聴いた気がするのですが、和やかな出来栄えとは逆に、レコーディングはかなりピリピリしていたとか。たしか臼井ミトンのラジオ番組で言ってました。大御所と新進気鋭の新人の共演ということで。

憲武●そのピリピリ感、映画の解説で読んだような気がします。夏を感じる季節になってくると、不思議とサンバとかボサノヴァとか聴きたくなりますね。 ほんと不思議です。

(最終回まで、あと565夜)

2026-05-03

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】アンジーヌ・ドゥ・ポワトリーヌ「Sarniezz」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
アンジーヌ・ドゥ・ポワトリーヌ「Sarniezz」


天気●ヘンテコリンな人たちを見つけたので、それを。


天気●一見しただけで、とてもヘンです。全身ドット柄。これだけ話題沸騰です。実際、今年に入ってSNSで注目され、7月のフジロックへの出演が決まっているそうです。

憲武●すべてドットですね。楽器も。ステージも。あと特徴的な鼻。

天気●やっていることは、とにかかくややこしい。こっちとらにはまるでわけのわからない変拍子。で、この複雑な曲をきっちり弾きこなす。ギター/ベースの人がルーパー(一定の音型を繰り返す足もとのエフェクター)を駆使して、何人ぶんかのアンサンブルを奏でます。

憲武●なんかこう、前半のゆったりとしたベースのフレーズが、後半のテンポが早くなってからも頭の中でずっとループしてて、音が何重にも聞こえてくる感じです。

天気●ほかにもヘンなところがたくさんあります。見逃しがちなのですが、ギターがヘンです。よく見てください。フレットがやたら多い。おそらく半音の半分、4分の1音刻み。何を狙ったのか(例えば中東には4分の1音を使う音階があります)、理解が追いつきません。

憲武●なんかおかしいと思ってたのは、そういうことでしたんですね。なるほどフレットが多い。

天気●あと、注目が、足もとのエフェクターのつまみを足の指で操作する。これは初めて見ました。ともかく、ひぇー! とびっくりさせられてばかりです、この人たちには。

憲武●足の指はそういえばなかなか使ったことないですね。

天気●「Angine de Poitrine」はフランス語で狭心症という意味だそうです。カナダのフランス語圏(ケベック州)出身だから、フランス語なわですが、バンド名/ユニット名からして、まがまがしくて、曲者です。ヘンテコリンな人たちがいっぱい出てきてほしいです。世界中から、どの分野にも。

(最終回まで、あと566夜)

2026-04-19

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】アンディ・ウィリアムス「Music to Watch Girls by」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
アンディ・ウィリアムス「Music to Watch Girls by」


憲武●先週のコーデッツの「ロリポップ」の中で、指を口に入れて鳴らしていた人物を取り上げてみたいと思います。アンディ・ウィリアムスで「Music to Watch Girls by」(1967)です。


憲武●邦題は「恋はリズムにのせて」ですね。この曲もやはりカヴァーの多い曲で、どこかで耳にされてる方も多いんじゃないかと思います。

天気●どこかしこで流れていた感じです。テレビとか。

憲武●アメリカではインストゥルメンタルのボブ・クルー・ジェネレーション盤の方がヒットしてたようなので、そっちもわりとどこかで耳にしてるんですよね。こちらです。昔はこの手のイージー・リスニングがわりとヒットしてました。最初イージー・リスニング盤がヒットして、そのうち誰かが歌入りでカヴァーするというパターンが多かったような気もします。

天気●ぱっとは思いつかなくて、「恋は水色(L'amour est bleu)」がそうかなと思って調べると、ヴィッキー・レアンドロス(単にヴィッキー)による歌唱が先でした(1967年)。ポール・モーリアのイージーリスニング/インストはその翌年。

憲武●うーんと、そうですね。思いついたところでは、「蜜の味」、「コンドルは飛んでゆく」、「太陽の彼方」。と、それと「スマイル」などでしょうか。この「恋はリズムにのせて」に戻りますと、わが邦では、稲垣潤一と荻野目洋子のデュエットヴァージョンがあります。原曲がやはりいいんでしょうね。どうアレンジされても魅力的な仕上がりになってます。

天気●イージーリスニング特有、かつ60年代ポップス特有の、チープ感(悪い意味じゃないです・以下同)に、歌謡曲特有の安物感、かつ日本語訳詞にありがちな安物感が加味されて、なんとも言えない。

憲武●アンディ・ウィリアムスはいろいろな曲をカヴァーしてますが、「ムーン・リヴァー」が有名ですね。それとか「ゴッドファーザー愛のテーマ」など聴いていると、本当に歌の上手い人だなと感じます。

天気●オリジナルが思いつかないくらい、カヴァーのイメージが強いです。

憲武●そうですね。私もカヴァーの人という印象です。子どもの頃、アンディ・ウィリアムス・ショーを毎週観てたんですが、そこにオズモンド・ブラザースがよく出ていて、感情移入しちゃって子ども心にハマりました。ですのでジャクソン5より、オズモンド・ブラザースの方が親近感があります。

天気●兄弟姉妹やら家族で、というグループ、ありましたね。パートリッジ・ファミリーとか。

憲武●パートリッジ・ファミリーといえば、デビッド・キャシディですね。アンディ・ウィリアムスについてはいつかここで取り上げてみようと思ってましたが、思いがけないかたちで取り上げることとなりましてハッピーです。

(最終回まで、あと567夜)

2026-04-12

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ザ・コーデッツ「ミスター・サンドマン」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ザ・コーデッツ「ミスター・サンドマン」


天気●ここは週刊「俳句」なので、ときどき季語にこだわってしまうわけで、「春眠」から「ミスター・サンドマン」(1954)を。カヴァーの多い曲ですが、今回はオリジナルのコーデッツ版で。


天気●ザ・コーデッツは1946年結成。全員が鬼籍の人です。この曲と、もう1曲、「ロリポップ」(1958)というヒット曲があって、グループ名は知らなくても(私も知りませんでした)、この2曲は、耳にしたことがある人が多いんじゃないでしょうか。

憲武●はい、2曲とも聴いたことがあります。確かウチにコーデッツのベスト盤があったと思いますが、何処かに行ってしまいました。「ロリポップ」で指を口に入れて鳴らしている男性はアンディ・ウィリアムスですね。

天気●サンドマン(砂男)は、欧州各地の民間伝承で、大きな袋を背負っていて、その袋の中に睡魔を誘う砂が入ってるというやつです。目の中に砂を投げ込まれるというと、えらく痛い気もするのですが、眠気を誘われるという作用も、感覚的にわからなくない。

憲武●眠くなる時って、なんかこう砂的な感覚ってありますね。わかります。目に入ると痛いですが。幼稚園の頃、「忍者部隊月光」ごっこをしていて女の子に、砂を目に思いっきり投げつけられたことがあります。

天気●ひどい仕打ち。砂男は「蛙の目借時」にも通じるものですね。空想的な伝承という意味で。蛙が目玉を借りて行ってしまうという経緯よりは、砂男の砂のほうが、実感に近い気もしますが、眠気って、昔から不思議な現象だったのかもしれません。

憲武●眠気に関する童話や説話って、たくさんありますよね。

天気●それにしても、夜になって眠くなる、朝まだ眠い、というのは、気持ちのいいものです。

(最終回まで、あと568夜)

2026-04-05

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】松任谷由実「ルージュの伝言」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
松任谷由実「ルージュの伝言」


憲武●前々回は西城秀樹の「薔薇の鎖」というロカビリーな曲でしたので、今回もロカビリーな選曲ということで、松任谷由実で「ルージュの伝言」。


憲武●この曲は3枚目のアルバム『コバルト・アワー』(1975)に収録されてます。作詞作曲は荒井由実です。この時は荒井由実を名乗っていました。こっちの名前の方が僕的にはしっくりします。この曲をラジオで何度か聴いて、当時住んでいた春日部の名曲堂というレコード屋で、シングル買いました。シングルヴァージョンはこちらです。

天気●名曲堂。いい名前。

憲武●たぶんラジオで聴いた時に思ったのは、ピアノの伴奏とコーラスの楽しさだったと思います。コーラスは重要な要素を成してると思いますね。動画のコーラスはチャープスですし、オリジナル盤のコーラスは、大貫妙子、吉田美奈子、伊集加代子、山下達郎です。オリジナル盤の終盤の山下達郎のコーラスが秀逸です。

天気●伊集加代子って、当時のいわゆるニュー・ミュージックのクレジットでやたら見ました。ソロ名義のものがあるのかどうか知りませんが。

憲武●シンガーズ・スリーとしてのアルバムならありますね。さて、この動画では、かまやつひろしが不審者っぽく闖入して来るんですが、このコーラスもまた、なんかこう、泣かせるものがあります。かまやつひろしも山下達郎も、彼らが青少年期に吸収したであろう音楽、ビーチボーイズ、ポール・アンカ、ニール・セダカなどを感じさせるからなんですね。

天気●往年のアメリカン・ポップスをもろ狙った作りですね。

憲武●そうですね。この曲だけ、他の曲とは毛色が変わってると思います。それで荒井由実をもっと聴いてみたいとなったかというと、そうではなかったです。シングル盤だけで満足したのか、他の曲がピンと来なかったのか、アルバムを買おうとはならなかったですね。

天気●私は1枚目と2枚目のアルバムは買いました。荒井由実名義。それ以降はさっぱり。この「ルージュの伝言」はリリース時にラジオとかで聴きましたが、曲調の狙いが見えすぎるのと、曲の設定、「あのひとのママ」とか、歌詞が気持ち悪い。この人にまったく興味がなくなるきっかけになりました。1枚目とかの音は好きだったんですけどね。

憲武●僕も『ミスリム』はアルバム持ってます。わりと聴き出したのは大学入ってからです。と言ってもアルバムは買わずに貸しレコードを録音したりしてですね。友だちもわりと聴いてて、特に女子学生がすぐにこう、ユーミンてさあ、とか喋ったりするんで聴いておこうと思ったんだと思います。

天気●当時の学生の話題にはなってたんでしょうね。

憲武●はい。「ポパイ」という雑誌とユーミンは二大潮流でしたね。メジャーになればなるほど毀誉褒貶に晒されるわけで、この人もまた例外ではなく、ある政治家と親しくしていた関係もあって、一時期まったく聴かない時もあったわけですが、そうですねえ、当人とはなんの関係もない人たちの感情如何によって左右される存在って、大変ですね。 

(最終回まで、あと569夜)

2026-03-29

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】大瀧詠一「お花見メレンゲ」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
大瀧詠一「お花見メレンゲ」


天気●今回は時節柄、大瀧詠一「お花見メレンゲ」。『NIAGARA CALENDAR』(1977)の3曲目、すなわち3月の曲です。


天気●大瀧詠一には「恋はメレンゲ」(1975)もあって、このラテン・リズムに関心があったのでしょうね。当時、ラジオとかで本人の口から聞いたような気もしますが、そのあたりのはごっそり記憶から抜けてます。

憲武●音頭とかメレンゲとか、賑やかで陽気が大瀧詠一の本領なのかと。「A LONG VACATION」もいいんですが、やはりこちらの方が落ち着く感じです。

天気●どんなリズムかもよくわかりませんが、とにかく軽やか。卵白を泡立てる、あのメレンゲとスペリングが同じのようで、泡立て器でかき混ぜるようなパーカッションを想像しながら聴いています。

憲武●よく夜のラジオで掛かっていたような記憶があります。なんかこう華やかな雰囲気が広がるんですよね。部屋に。

天気●サビで、「桜咲いたッタ、パッと咲いた♪」「桜散っちゃった、パッと散った♪」の譜割りが妙味です。意味の区切りとは違って、タパット♪ で乗っていく。ここがほんと愉しいです。

憲武●ほんとに、タパットと聞こえます。桜が咲いて、散ったという歌なんですが、まさに上野のお花見って感じです。都内ではそろそろ満開なんでしょうか。

天気●きょうは晴れるみたいですし、桜並木を気持ちよく散歩しようと思います。

(最終回まで、あと570夜)

2026-03-22

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】西城秀樹「薔薇の鎖」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
西城秀樹「薔薇の鎖」


憲武●三月というと、この曲を思い出します。西城秀樹「薔薇の鎖」(1974)。作詞はたかたかし、作曲は鈴木邦彦です。


天気●聴いたことがあるような、ないような、忘れちゃったような。でも、きっと一度はテレビで聴いている曲だと思います。

憲武●この曲は、春日部にあった名曲堂というレコード店でシングルを買いました。B面は「子猫とネズミ」という大人しい恋の曲です。「チャンスは一度」とか「情熱の嵐」とか、わりとアーリーな頃から西城秀樹って気になっていたんです。なんか今までと違う感じの歌手出て来たみたいな雰囲気で。

天気●郷ひろみと野口五郎と3人セットみたいなイメージで、当時、捉えていました。今からすると、西城秀樹がいちばんロックっぽいのかも。

憲武●そうですね。今から思えば。歌謡番組等で、この楽曲が披露される際に、派手なマイクスタンドアクションも披露されてまして印象的でした。もっとマイクをブンブン振っていたような、勝手な印象があったんですが、違いました。むしろそういう印象を抱くほど、衝撃的だったということでしょうか。

天気●ああ、マイクスタンドのこういうアクション、ありましたねえ。

憲武●はい。月刊平凡だか明星だか忘れましたが、西城秀樹は当時ハードロックなど、ロックを聴き込んでいて、ロッド・スチュワートのマイクスタンドアクションを取り入れたいと思っていたようで、かまやつひろしに相談した結果、かまやつひろしがアルミ製のマイクスタンドを作ってくれたという記事がありました。そのロッド・スチュワートのマイクスタンドアクションがこれです

天気●このへんの影響が大きいのでしょうね。元祖かどうかはわかりませんが。

憲武●影響が見て取れますよね。長いマフラーやジャンプスーツとか。この長いマフラーって、当時僕も影響されて、母に頼んで編んでもらったことがあります。実は。僕は西城秀樹経由でしたが。

天気●甘えんぼうですね。いいおかあさんだ。

憲武●歌謡曲のリリースのサイクルって、一曲三か月くらいでしたんで、どの歌手がどの時期にどんな楽曲を歌ってたかって、今でもうっすら覚えてるんですよね。西城秀樹はこの後、「激しい恋」をリリースしますが、それは夏向けの曲でした。 

(最終回まで、あと571夜)

2026-03-15

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】アル・クーパー「You Never Know Who Your Friends Are」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
アル・クーパー「You Never Know Who Your Friends Are」


天気●前回から、何つながりにしようか、あれこれ考えて、思い出深い見開きの中ジャケつながりにしました。アル・クーパー『You Never Know Who Your Friends Are』(1969)。これですね。机の上の雑然。


憲武●初見ですね。

天気●たいそう好きなアルバムで、その冒頭、アルバムタイトル曲を。


天気●ラグタイム風のピアノに始まって、チューバの低音ライン、ラッパが加わり、コーラスが加わり、2:10あたりからのアウトロ(後奏)は、シンセサイザーの単音フレーズとエレキギターの多重が絡まる。愉しい展開です。

憲武●一聴、賑やかさがいい感じです。コーラスの入り方が、グッときました。

天気●当時、よくあるロックな感じとは一線を画した曲調・アレンジをとりわけ好いていました。

憲武●なんかこう、ヴァン・ダイク・パークスを思ってしまいました。音に凝ってるところが。

天気●歌詞は、ややシニカルで虚無的です。喉が渇いたら、ワインをくれる? 家を買うとき、サインをしてくれる?(連帯保証人はダメだと思うけど) 捕まったとき、保釈金を払ってくれる? 誰がほんとうの友だちなのかは、わからない♪ このアルバム、表ジャケットがデモ制圧の写真(?)で、そのイメージと相まって、なかなか意味深長な1曲目に思えたんですよね。


憲武●時代的な背景もあるんでしょうか。ジャケットを眺めながら聴くと、また違う意味に聞こえたりするという経験はよくありましたね。

天気●紙ジャケットの話が続いて、レコード時代を思い出しちゃいました。個人的にはもう戻ることもなくて、懐かしむだけなんですけどね。

(最終回まで、あと572夜)

2026-03-08

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】トッド・ラングレン「I Saw The Light」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
トッド・ラングレン「I Saw The Light」


憲武●先日、ひさびさに徹夜しまして、朝日に両手を広げたら、「アレ?この感じどっかで見たことある」と思ったらトッド・ラングレンのアルバム『サムシング/エニシング?』(1972)の中ジャケでした。というわけで、Todd Rundgren「I Saw The Light」。


憲武●この写真ですね。まさに。



天気●レコード時代の紙ジャケの醍醐味ですね。見開きでバーンとビジュアルがあった。

憲武●レッド・ツェッペリンのヒプノシスのものとか衝撃でした。この写真見てると、「やったー! 仕上げたぜ!」みたいな至極快活な気分になりがちです。

天気●徹夜明けな感じの写真ですね。

憲武●この曲は、いまさら申すまでもなく超有名曲で、いろんな人がカヴァーもしていて、何も言うことないような気もしますが、これ、トッド・ラングレン全部一人でやってるんですよね。

天気●当時、トッド・ラングレンにはその情報が必ず付いてきました。マルチ・プレイヤーで一人で全部つくっちゃうという。

憲武●1972年当時の宅録というと、ポール・マッカートニーの「マッカートニー(1970)」があります。この「サムシング/エニシング?」は音を聴いてると、まず右側のタムが印象的で、相当離れてると思える左側のハイハットと、マラカスのような楽器、あとチーンと鳴るトライアングルなど、いろいろと面白いんです。

天気●アルバムの1曲目ですよね。バスタム(?)とベースの同期が印象的なイントロで、スライド・ギターが入る。とても好きな曲でした

憲武●歌詞は「昨夜、きみの瞳にひかりがみえた/一緒に歩いているときみへの愛情に気づいた」みたいなことですが、ここで思い浮かぶのが、ビートルズの「ナイト・ビフォー」の「Love was in your eyes(Ah, the night before)」ていうとこです。比べてみると相手の態度が逆で面白いです。

天気●欧米の人は、瞳の中にいろいろ見ちゃうんですかね。「Rainbow in your eyes」(Leon & Mary Russell)とか。

憲武●サザン・オール・スターズの曲で「瞳の中にレインボウ」がありますが、そこから借りたんでしょうか。トッド・ラングレンはユートピアの頃から何回も来日していて、バブルの頃でしたか、友人が地下鉄丸の内線の中で見かけて、顔の長さでトッド本人と気づいたと言ってました。

天気●長いですよね。

憲武●はい、長いです。現在ハワイのカウアイに住んでいて、かつてプロデュースしたことのあるホール&オーツのダリル・ホールと自宅で「I Saw The Light」をやってます

天気●体重増で、顔の下半分に肉がつき、サングラスも相俟って、どこかの悪徳社長みたいです。

憲武●貫禄あります。声が「サムシング/エニシング?」の頃は繊細な印象でしたけど、この動画では太く力強いものになってますが、井上陽水も若い頃と現在ではそんな違いがありますね。経験とか自信が声質を変えるんでしょうか。

(最終回まで、あと573夜)

2026-03-01

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】ジャッキー・ベンソン「Keep On」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ジャッキー・ベンソン「Keep On」


天気●今回は、このところ大のお気に入りのギタリスト・ボーカリスト、ジャッキー、ベンソンを。


天気●例によって、YouTubeで偶然見つけた人なのですが、1990年、テキサス州オースティン生まれ。

憲武●ベンソンといえば、ジョージ・ベンソンしか知らなかったですが、この方、初めて見ました。

天気●「V」と「B」の違いはあるのですが、ともかくヴェンソン/ベンソンです。Wikipediaによると、アルバムデビューはライブで、これまで6枚のライブ・アルバムと5枚のスタジオ・アルバムが出てます。あくまでライブの人みたいです。

憲武●アルバムはずいぶん出てますね。聴きたい。

天気●まずもって、とにかくギターの音がいい。はじめの頃は黒いレズポールがもっぱらのようで、しかもレスポール社ではなく、その廉価版と思われている(実際、おおむね低価格)エピフォン。ギターは値段じゃなくて弾く人ですね、当たり前だけど。

憲武●はい、ギターの音がいいですね。あまり主張してなくて、いい感じです。

天気●ギタープレイは幅広くて、歌のバッキングとソロをスムーズに転換する感じ。ケレンがなくて、パンっと前面に出てくる音。

憲武●いやあ、なんかこの人、いいですね。

天気●歌はきほん軽やか。ギターと歌と一体で愉しい。あかるいのがなによりです。

憲武●軽やか、愉しい、あかるいって、重要ですね。他のライブも観てみたいです。

天気●こういう音楽、こういうプレーヤーについては、あまりしゃべることがなくて、困るのですが、つまりお気に入り、としか言えない。まあ、興味を持たれた方は、YouTubeチャンネルでライブがふんだんに観られます。

(最終回まで、あと574夜)