読書会参加者による崎原風子の五句
『崎原風子句集 俳句文庫10』1980(昭和55)年12月25日/海程新社
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安里琉太選
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
う。夜あけ前のうすい肉親それらの離陸
ふ。しあわせな幼年のねじ式の空
象1頭の心象都市や時間の鋸歯
薄みどりの頭蓋と地球自転あり
石川美南選
納骨堂(パンテオン)口をひらけばみな独語
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
婚礼車あとから透明なそれらの箱
ン。洪水の記憶が石のようにとぶ
水は空にヨハン・クイナウ歩道橋
大塚凱選
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
ぬくい挨拶ながれ娼婦のおびただしい箱
あの手術台ときどき水から白鳥かえり
犬の昼血は木のように立って眠る
花嫁と赤く置かれた綿刈機B
小川楓子選
ツイスト終り河へ鮮明に靴ぬぐ母
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
い。そこに薄明し熟れない一個の梨
8月もっとはるかな8へ卵生ヒロシマ
ヒエラル墓地の昼の一日の大きな容器
黒岩徳将選
みの虫満ちやわらかい「人類」という語
森に皿みがかれ獣に透明な季節
匙から匙へ未明薄められる嬰児
船・男等ねむらせて午後は多毛へ
都市はながれるロープ鳥のあらい目覚め
寺井龍哉選
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
未明にある沼父母にない歌う習性
空にひろがり夏すでに馬喪いつつあり
白日のオートバイ老婆の到着性
花嫁と赤く置かれた綿刈機B
外山一機選
野の十字架冬日尽きむとして奢る
ツイスト終り河へ鮮明に靴ぬぐ母
八月おまえは太陽と灰反芻する
い。そこに薄明し熟れない一個の梨
8から見えるかーんかーんと犬の昼
中矢温選
鳥性の少年稲妻に義手見せて
神父と風船つぎつぎ季節労働者たち
未明白く塗られ清潔な死鶏あやす
あの手術台ときどき水から白鳥かえり
産院裏父ら縞馬と茂りあい
原麻理里子選
みの虫満ちやわらかい「人類」という語
蛾の勲章し青年のやわらかい未明
雨後の屋上蒸発したい猫がふえる
森に皿みがかれ獣に透明な季節
あの手術台ときどき水から白鳥かえり
平岡直子選
搾乳場で少年白い風景盗む
産院裏父ら縞馬と茂りあい
8から見えるかーんかーんと犬の昼
水を欠いた洪水〈だだ〉の電話局
父よ逃げる鏡よ月色の犬よ
三世川浩司選
ツイスト終り河へ鮮明に靴ぬぐ母
わたしと寝棺のまわりゆたかな等高線
い。そこに薄明し熟れない一個の梨
8月もっとはるかな8へ卵生ヒロシマ
ヒエラル墓地の昼の一日の大きな容器
柳元佑太選
雨後の屋上蒸発したい猫がふえる
乳バンド売る老人等絶えずラクダ蒸発
まぶしい欲情それに蹤いて密集の魚
〈赤い犬〉というジン嚥下するレー時間
紅葉のなかの犀荒廃のピアピア
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