6. クズウジュンイチ 静かな野球
爪うすく二月の米を研いでをり
春川の水にもしやりとしたところ
後ろ手が土筆をいつまでもさはる
新体操部へ燕が来て光る
つちふるや帰れば落ちてゐる吸盤
直線の模様が切り替はる浅蜊
静かな野球たんぽぽがわりとある
雲が日を隠して虻のすぐ休む
キューピーが花の神社に置いてある
小鳥屋が一人で運ぶ花曇
兄嫁が通りかかつてすひかづら
かははぎの煮汁に顔の剥けてをり
裏山のそとがはにゐるほととぎす
ひつかけの釘に傾く草刈機
爪先の探るくらがり軒忍
息深く吐けばぽろりと蝸牛
茄子の花ひよこが慣れてきて歩く
蚊の夜こそとりわけ光れ券売機
紙箱に乾いて軽く兜虫
細きゆうり塩して棘は手にさはる
こどもから鳥のにほひのする端居
炎天のガードレールにひどく粉
遅い人待つて木槿の信号機
鈴虫は甕に鳴き継ぐ寝静まる
邯鄲を透けてみどりの月明り
こほろぎを藪にまかせて雨降りの
黒こげの金具は裏のをみなへし
ひよどりは疲れてふつと寝てしまふ
生き死にの魚が月夜の袋網
車座がほぐれてずれる吾亦紅
持主は家を出てゐるゐのこづち
次の田に次の田に雨まんじゆしやげ
指笛にぴしりと割れて通草の実
十三夜つるりとくぼむ駅の椅子
冬支度老いし者より鼠めく
はすかひに鈴の鞄や花八手
白つぽい皿にラップの牡蠣フライ
ゆりかもめ薄く大きく埋立地
大群にかなり転写の鴨がゐる
鱈ちりやきれいに住んでメゾネット
枯芦に踏み入る葬儀屋に任す
生の火を荷台に積んで焼芋屋
休校の一日中を冬の鵙
中指が白くてうさぎごとさはる
あの器具に鯛焼ひとつひとつ焼く
雨粒のこまかく付いて狐かな
立てかけの葱が乾いて下に砂
うれしさや犬が廻つて冬椿
双六の賽のもとより角丸し
泥抜きの寒鯉のゐるベビーバス
1 comments:
中田翔バツトへし折り梅雨に入る 折戸洋
コメントを投稿