第715号
2021年1月3日
■2021年「週刊俳句」新年詠 (1)■
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二〇二一年新年詠(1) (到着順)
年寄りの駆け出しとして年迎ふ 大島雄作
コロナ不要 不急の地球手毬つく 中内火星
初旅やあけぼのの富士むらさきに 熊谷 尚
救護所の鏡に映る初景色 谷口智行
牛柄の余白に謹賀新年と マイマイ
去年今年思ひながらに思ひ古る 岡田一実
杖上げて牛後の天にたたく音 大井恒行
malsaĝuloj のひとりの我を淑気は襲う トオイダイスケ
さいたさいた初鶯のあやまてり 赤野四羽
おほぞらや地球のいろは冬の青 市川綿帽子
星近し声をひそめて姫始 KAZU
コスプレの娘に草石蚕ひとつずつ 曾根 毅
願ふこと祈ることあり去年今年 杉田菜穗
鷹赦されずして 罰とは名づけえぬもの 宇井十間
鯛焼や彼にも彼女にも未来 木野俊子
予選Bブロック嫁が君の推し 中山奈々
初茜地祇と英霊まづ照らす 竹岡一郎
太陽を舐め黒牛の大金糞 九堂夜想
牛の音のやさしきうねり初山河 飯田冬眞
あらたまの黒き牛より光り出す 篠崎央子
後輩の結婚を知る賀状かな 杉原祐之
初日出みな軽やかな風である 及川真梨子
おなますの人参分布よく晴れて 笠井亞子
ぐにやぐにやのなまはげが来る最後の家 竹内宗一郎
カニカマと水で凌いで新年も 芳野ヒロユキ
ダイヤモンドダストいけない子どもだつた 小西瞬夏
幸福の硬貨をもらう春初め 桂 凛火
きらきらとフレア空飛ぶ宝船 ハードエッジ
歌舞伎めく指差呼称して初仕事 中村想吉
回文状の春ドローンの包囲 上野葉月
太箸や家族ごつこのはじまりぬ 矢作十志夫
こだましてコロナの裂目より初日 鈴木茂雄
門松や歩けば転ぶそれでも歩く 瀬戸正洋
隅から隅まで花びら餅包む 竹井紫乙
人間を連れて犬来るお正月 西生ゆかり
初春や夫の珈琲いと甘し 河本かおり
二日はや天辺ひらくオムライス 柏柳明子
初風呂の蛇口にびよんと吾の顔 山田すずめ
初明り古き洋画に舟を漕ぎ 遠藤由樹子
初詣ネアンデルタール人の陰少し 山中西放
影踏めば逃げゆく人の春著かな 五十嵐秀彦
犬吠えてゐて門松や隣んち 宮﨑莉々香
蓮根の穴も食うたと初笑ひ 広渡敬雄
淑気満つあかちゃんのはくミキハウス うにがわえりも
綱曳や湖の魚を甘く煮て 山口昭男
蘇民将来子孫家家門明の春 琳譜
白粉に目張り頬紅花小袖 髙木小都
無限初鳩松が枝を撓めしむ クズウジュンイチ
風に翼 未解読文字は水の底 小田島 渚
スワン菊名の錆びた感じに初あかり 小川楓子
膝元の歌留多とられてしまひけり 矢野玲奈
正月のおいしいごはんたべたいな 松尾和希
年玉の袋に鍵を渡されし 齋藤朝比古
猫の鼻柱につきぬ年始め 瀬名杏香
良縁をもう願わない初詣 森 羽久衣
蒲団出ず声聞くのみに初雀 小川軽舟
波ぶつかる波の飛沫や大旦 対中いずみ
去年今年街に漂ひたる怒り 廣島佑亮
コーヒーに垂らす蜂蜜獅子頭 小林かんな
注連飾る性のシンボル付け替えて 髙橋透水
元日のルーティンロールケーキ切る 野口 裕
我佇ちぬ初山河の出つぱりとして 鈴木牛後
初火事のあなたあなたの投票機 堀田季何
御降のこと天麩羅のこと告げり 岡村知昭
去年今年傾がせ東京タワー屹つ 三島ゆかり
初東雲タオルに深く顔沈め 小池康生
そこからでもいちがつのつきみえるのか 柳本々々
曖昧と模糊と仔猫の去年今年 なむ烏鷺坊
この水もあの水にゆく初明かり 高梨 章
初詣未来が少し有ればいい Fよしと
初夢の鶏に蔓延する人語 西川火尖
酔ひ醒めにクラクラ日記読始 津髙里永子
真珠色の月の残れる大旦 玉田憲子
飴玉を駒に使つて絵双六 細村星一郎
左手は右手で洗うお正月 雪我狂流
新年のみづ遣る果樹に雑草に 箱森裕美
棒読みのような書き初め飾るかな 小野裕三
賢人と牛のかたちに切る時計 川合大祐
荒波を人魚になって去年今年 紀本直美
一枚目はいつも富士山初暦 藤崎幸恵
初詣ついでの猫を拝みけり 青木ともじ
読初めの指が四、五本とぶ話 石原ユキオ
亡父から賀状(料金不足)来る 荻原裕幸
正月の凧ひとつ鳴る渚かな 村上鞆彦
榧の木の五百歳なる淑気かな 堀本裕樹
足白き猫の鈴の音大旦 吉川わる
伊勢海老のくつたり逃げ恥最終回 谷村行海
愛欲に(自称)があって栗きんとん 月波与生
空押しの凹みめでたく読み初む 佐藤りえ
一身の肉を忘るる初湯かな 倉田有希
暗がりへやさしい牛の舌のこと 野間幸恵
口内に太き腕あり獅子頭 菅原はなめ
稜線にしまはれてゆく御元日 田口茉於
うずくまる心をほぐす初明り 隠岐灌木
淑気満つアンパンマンを焼くけむり 楠本奇蹄
みづおとの氷の向こう城の跡 山岸由佳
初晴れて夜勤明けての研修医 衛藤夏子
剃ってない眉間痒がらせる初日 略箪笥
双六の世にひらかなの降りにけり 生駒大祐
数の子の恨み恐ろし熱帯夜 いなだ豆乃助
去年今年たたかふひとの白き服 井上雪子
雑煮餅数年会っていない人 久留島元
火傷しつつ蜘蛛の糸啜るや初夢 横井来季
寛やかに寛やかに初日の出かな 犬星星人
初夢いまだに日々こんなにも日々 野口る理
肩幅のあり元日の夜の雲 中嶋憲武
天球に無数の航路宝船 福田若之
お煮染めに火を入れ直す二日かな 小野富美子
去年の雪ざつとこぼして神樹あり 浅川芳直
東京の空美しき初電車 内田創太
初明りしてクレーンの影静か 村田 篠
舞初や大きな腹が立ち上がる 青島玄武