第716号
2021年1月10日
■2021年「週刊俳句」新年詠 (2)■
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二〇二一年新年詠(2) (到着順)
はつはるの瞳も耳も萌ゆるべく 赤羽根めぐみ
汝はや酔ひて年始を告げわたる 中矢 温
竜の玉世界を少し明るくす 神山 刻
マスク干す二日に風のひとつなき 村上 瑛
元日の夜や電話して月痩せて 戸澤光莉
お鏡丸くて牛糞ほかほか 平和像 堀本 吟
筆始なんと書くかをぐずぐずと 池田澄子
マンションの門松に傘刺してある 小林鮎美
観覧車の真中を出づる初日かな 松野苑子
金継ぎのごとき雲端初日の出 小谷由果
歌かるた肉食獣のやうに待ち 西山ゆりこ
おだやかに危機のありけり去年今年 しなだしん
ちよろぎちよろぎ夢の残像転がせり 常盤 優
四日だとばかり思つてゐた三日 柘植史子
屠蘇散を訝るをのこめのこかな 岸本由香
この猿子届くや陰のアパルトマン 薮内小鈴
雲は鰐喉のあたりに初日溜め 黒岩徳将
太箸といつもの箸と混ざりをり 千野千佳
卒論の長い脚注初筑波 郡司和斗
酒瓶を取りにゆく間に年新た 星野いのり
幾重にも藍を重ねし初御空 坂西涼太
御降を飲みこむ海の息づかひ 鈴木総史
三ヶ日ゾンビ映画を見まくった 山本真也
賀状じまひした筈なのに賀状くる 渕上信子
泣いてる子は泣いてるままに初写真 吉田 瞳
牛日の風門に貼るホッカイロ 森 青萄
冬襖家族ぱらぱら画面去る 斎藤悦子
火星より土星へ飛びぬ絵双六 宇志やまと
のつぺらぼうのやうに過ぎゆく三が日 金子 敦
LGBTのGとしての姫始 雪我狂流
初夢に叫び続けてゐたらしく 松本てふこ
花火爆竹鐘乱打して去年今年 村越 敦
おかけになったでんわげんざい松の内 なかはられいこ
敵といふもの今は有り人勝節 橋本 直
初日記本日猫の訪ひ来 青山酔鳴
去年今年教会の戸が開いてゐる 小久保佳世子
人日の猫のすり寄るふくらはぎ 大野泰雄
乳清の濁りの豊か日の始め 南方日午
人日や菓子折りの紐とつておく 有瀬こうこ
可愛さや干支三周をまつたうし 佐藤文香
朗らかな声重ね合ふ初電話 相馬京菜
初山河ひとすぢかかる蜘蛛の糸 中西亮太
んぐうるると擦り寄る猫を初抱つこ 茅根知子
寒灸すえたしCOVIDにあの人に 春日石疼
読初は今年はゆけぬ旅日記 内村恭子
独楽飛ばす子を怖れをり姉妹 羽田野 令
注連飾る項が夜気に触るるとき 森山いほこ
側溝にビニールボール松の内 藤田 俊
ふっと気付けば寒苦鳥なり 岡本遊凪
初東風や朱華にひらく工芸茶 このはる紗耶
ゆらゆらと初湯のところどころ夢 月野ぽぽな
声高にヤンキーら来て初詣 関 悦史
初凧の糸をたどれば父がゐる 津川絵理子
お雑煮にタイタニックが沈没す 榊 陽子
赤べこの赤あたらしい問いとして 八上桐子
六日には七百円の苺かな 松本 恵
次々に死者の挨拶去年今年 石原 明
ちはやふる絵札に伸びる手と手と手 小林苑を
初仕事一本もなきちんすかう 龍翔
なまはげの二匹で来れば男女かな 岡田由季
お飾を頭に装着しピン芸人 亀山鯖男
うみうし や はつひ の うみ の ありどころ 高山れおな
鳥の木に朝日満ちたる淑気かな 大井さち子
半島の先端目指し初電車 望月とし江
冬桜すこし寄り添ふことゆるし 藤本夕衣
道中双六あそびごころも遅れたり 谷口慎也
黒豆や壊るゝものに民主主義 今朝
ぽつぺんの耳鳴りぽこぼこと小人 浅沼 璞
人日の七つ並べるハッシュタグ 瀬戸優理子
しょうが湯が濃すぎるのかもこの単語 二村典子
読みはじむ読むほかに興あるべしや 神保と志ゆき
見晴らせば故人たなびく初筑波 岡野泰輔
初空へおほきく口をひらきけり 藤原暢子
初空のそこへ地球を蹴りとばす 大西主計
元朝の縁取る匙のひとつきり 春野 温
鬚が髭に遭ふ初仕事 水野大雅
初風や額にあたらしきニキビ 水野結雅
大風の七草粥となりにけり 川嶋一美
ほのぼのと街の灯届く姫始 町田無鹿
若き水老いたる山の初景色 日原 傳
曳猿が見得を切ります斬られます 藤井祐喜
竹馬にいとこのような雲かかる こしのゆみこ
飲み物にトロミつけられ年男 喪字男
舌で知る臍の浅さの七日たる 山田耕司
七日を過ぎて思ひ出す事もあり 西村麒麟
うみとそら水平線のある賀状 高橋洋子
一枚は日本郵政(株)よりの賀状 松尾清隆
枯菊の密の砕けてゆくけむり 鴇田智哉
元旦の寝覚めの床の虚しさよ 林 雅樹
くひつみや積読の先づ一書採る 田中目八
初春やハルルハルハレひかり降る 瀧村小奈生
親族の舌の数ほど御慶かな 近江文代
松過ぎて剃るものおほき体かな 樫本由貴
コンビニの賀状いちまいだけ摘む 桐木知実
七種の地霧へ雪の降りにけり 若林哲哉
羊日に思う肢体を連れている 青山ゆりえ
小寒やクラリネットの音高し 宮本佳世乃
双六も箱根越えなる疲れかな 井原美鳥
初日出づ金・銀・鉄の斧をもて 飯島章友
元日や売られておらぬ欲しい花 うっかり
大福茶母より家系図の話 鈴木春菜
初夢や琳派の雨をさめぎはに 太田うさぎ
人日の電気ポットが漏れている 近 恵
旧年の葉に風の紋様雨の綺羅 下坂速穂
眺めては灯りがあたり室の花 依光正樹
見えて来るものを見るべく初旦 依光陽子
子を不意に泣かせてをりぬ七日かな 田口茉於
人の輪をはなれて開く初みくじ 進藤剛至
池見ればしづもる枯葉福笑 上田信治
去年今年ふいに時間の跳ねあがる すずきみのる