【小津夜景✕西原天気の音楽千夜一夜】
エミール・ロンドニアン「Missing Arrow」
天気●今週はゲストをお招きしています。
夜景●今日持ってきたのはエミール・ロンドニアンの「Missing Arrow」です。
夜景●エミール・ロンドニアンはストラスブール出身のジャズ・トリオで、この曲はファーストEP『Jazz Contenders』に収録されています。メンバーはベースギターのテオ・トリッチュ、キーボードのニルス・ボイニー、ドラムのマチュー・ドラゴ。ゲストのサックスはレオン・ファル。全員クラシック育ちのミュージシャンです。
天気●トリオを基本ユニットとして固定して、リード楽器をゲストで迎えるというスタイルは、融通がきいて、とても合理的な組織運営に思えます。
夜景●この曲のサックスが羽を広げて飛んでいるみたいな感じ、めっちゃ好きなんです。疾走するビートの上に、ゆったりとしたムードが乗っかっている。夢の中で、夜の街を彷徨ってるみたい。
天気●のびのびした演奏ですね。ちょっとダンサブルにも思える基本のリフレインに、サックスが乗る。ちょっとしたメロディの機微が、その「夢の中」感なのかもしれません。
夜景●ミュージックビデオもイメージの断片の編集で、なんとなく徘徊に通じる雰囲気がありますよね。
天気●コラージュがいい感じ。ハンディカム的な撮影も、全体を活き活きさせてます。
夜景●あとタイトルも好き。「行方不明」が迷子でしょ。で、「矢」。センスが鋭角。
天気●なにかの寓意とか象徴とかあるんでしょうか。
夜景●うーん、わからない…。
天気●わかんないけど、失われたとか、行方不明って、含意豊かな気がする。たしかにかっこいい曲名です。
夜景●この夏、彼らはいろんな町のジャズ・フェスティバルに出演しているようで、わたしもつい先日、ニースのジャズ・フェスティバルで初めて聴いたんです。彼らのステージは明るい時間帯だったせいか観客が少なくて。あまりに人がまばらだから、リハーサルなのかなと思って眺めていたら、本番だったという。楽しかったけど。
天気●おお! 南仏のジャズフェス! 気持ちよさそう!
夜景●ニースのジャズ・フェスティバルは1948年に世界初の国際ジャズ音楽祭として始まったのですが、規模はこじんまりとしています。大きめの盆踊りくらいな感じ。全4日間で出演するミュージシャンは計24組。先日フジロックがあったので出演者数を見たら、総勢212組とあってびっくりしました。
(最終回まで、あと697夜)
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