2023-12-17

千野千佳【俳句のあたらしい作り方】斉藤志歩さんの俳句講座「俳句のひみつきち」を受講してみた

【俳句のあたらしい作り方】
斉藤志歩さんの俳句講座「俳句のひみつきち」を受講してみた

千野千佳

『蒼海』第18号(2022年12月)より転載

俳人の斉藤志歩さんの俳句講座「俳句のひみつきち」を受講中だ。Zoom上で月に一回(料金は一回三千円)、全四回の四ヶ月に渡る講座である。

句歴六年のわたしがなぜ初心者向けの俳句講座に参加しているのかといえば、斉藤志歩さんのファンだからだ。斉藤志歩さんは平成四年生まれ。第八回石田波郷新人賞を受賞されていて、この冬に待望の第一句集『水と茶』(左右社)刊行。平易な言葉を使って清潔感のある俳句世界を立ち上げる。〈水と茶が選べて水の漱石忌 斉藤志歩〉〈宴とほく月の廊下にすれ違ふ 同〉

全四回の講座は、第一回「俳句と出会う」、第二回「俳句を作る」、第三回「俳句を読む」、第四回「句会をする」と進む。現在第二回まで終了していて、この号が出る十二月下旬には最終回の句会も終わっている予定だ。

この講座は(俳句で)「説明しない」ことをテーマにしている。講師の斉藤さんはしきりに「やりすぎに注意です」と言う。〈チューリップ花びら外れかけてをり 波多野爽波〉を例に挙げて、「このくらいあっさりでいいんです」と繰り返し言う。俳句を作る方法として吟行と題詠を紹介し、どちらも「自分の外」に目を向けて作るから良いのだと言う。世の中の一般常識で句を作ろうとすると当たり前の句になるが、自分の経験から句を作ると当たり前ではない句になる。

講座で学んだことを直近の句会に活かすことにした。句会のお題は「生」。「夜学生」で作ろうと思い、ちょっと考えて〈失恋に気づかずにゐる夜学生〉と作ってみた。今まではこれで投句していた。すこし気の利いた十二音と季語を取り合わせた、いわゆる句会でウケるだけの句だ(いや、ウケないかもしれない)。

わたしはさらに頑張って自分の中の「夜学生」の記憶を手繰り寄せてみた。そういえば通っていた高校の隣に定時制の高校があった。ある雨の日、校門に定時制高校の子が五人くらいいて話しかけられた。不良っぽくてどきどきした。その記憶をもとに「あっさりと、あっさりと」と思いながら作ったのが〈傘さして夜学の群の膨らみぬ〉。

講座では講師の生の声が聞けて直接やりとりができるので、ただ本を読むだけに比べて句作への影響が大きい。わたしはつい手癖で句を作ってしまうが、講座で大事なポイントを確認すると、句の出来が格段に違ってくる。ともあれみなさん、斉藤志歩さんの句集『水と茶』を読みましょう。

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