2024-01-06

2024新年詠(テキスト)

 2024新年詠(テキスト)


羊羹のタツノオトシゴ年迎ふ  杉田菜穂
地上への石のきざはし初東雲  小田島渚
置き配の荷のぽつねんと鳥総松  井原美鳥
逃げられぬ空もありけり初御空  有本仁政
晴れゆけば元旦にこそかの龍を  大井恒行
大旦核融合は音もなく  んん田ああ
フィッシングメールあれこれ年の夜  杉原祐之
万博は止めてなほ良し初神籤   岡野泰輔
さびしさが既読にならず去年今年  鈴木茂雄
昨年の卵でつくる目玉焼   上野葉月
風邪寝して龍の鱗の生えさうな  飯田冬眞
裏白や夜は絡み合ふ龍となる  篠崎央子
去年今年どこか緊張していたる  うっかり
初売りの出会いちろりと桜子さん  芳野ヒロユキ
初御空劣化してゆく頭を上げて  竹内宗一郎
荒畑をあたためてゆく初日かな  小谷由果
大海を振り切る揺らぎ初日の出  広渡敬雄
わだつみの胎内にある爆心地  宇井十間
ご恵贈感謝の会の初句会    ハードエッジ
クレーンの先に初鳩おめでたう    クズウジュンイチ
朝刊の少女淑気を届けけり    中村想吉
春永や艶のましゆく飴細工    髙木小都
初空や大楽天家の吾が上に    五百石
金剛山(こんごう)の光を娶り初茜  原和人
女正月なる季語捨てよ年新た  酒井匠
陽も風も均しく買初の背中    鈴木総史
てろりすとって誰終らぬ福笑    赤野四羽
参詣と排除ベンチの初景色    安田中彦
停止線を止まれきれずに初日の出 尾内甲太郎
元日のまづ替へにゆく花の水    青木ともじ
きみから凭れてサティアンの年守る 大塚凱
恩師より届く賀状の手書き文字    金子敦
元日もただの一日立ち小便    北大路翼
破魔矢ごとやっさもっさを抜け出さん    小林かんな
鏡餅いつしゆん正座やめてゐる    宮﨑莉々香
日の本や雑煮食ふひと食はぬひと    火山晴陽
淑気満ちぬ寒風のなか蒲団干す    森 青萄
初富士や絵よりも暗く美しく    西生ゆかり
aiko的恋愛玉子酒の底    長田志貫
ブラジルは地震を知らず初御空    中矢温
地上への石のきざはし初東雲    小田島渚
「ディスイズアモンキーショウ」と猿廻    藤井祐喜
緊急緊迫こおる元日のテレビ    中内火星
大津波警報きのえたつうるう    佐山哲郎
葉牡丹に思案の渦のありにけり    山口昭男
身のうちの眼と空の初日かな    岡田一実
初御籤ひとつ括ればひとつ落ち    マイマイ
門松とポストと地質調査員    瀬戸正洋
天井を這ふ虫螻や去年今年    千野千佳
家元が一番下手な能始    青島玄武
元日や一瞬先の闇揺るる    大野泰雄
初日記精通日にも似た白さ     月波与生
新年を不幸なひとのぶんも寝る    土井探花
年明くるユーエヌセキュリティーカウンシル    直井あまね
太陽と一対一や初氷    曾根 毅
花のごと髪の広ごる初湯かな    柏柳明子
殪すものたふさるるもの四方の春    堀田季何
再開発地区ビル街の御慶かな    内村恭子
囃しあふ四十雀はも初籤    南十二国
初辰の水かゞよへる屋根の端    浅沼璞
元日の地震や闇から津波来るか    しなだしん
七日粥新嫁宵に湯がかぬ菜    井口吾郎
昇り竜の尾っぽの安否確認    竹井紫乙
元旦の神対応の便座かな    雪我狂流
想像のディズニーランドにて三日    ごしゅもり
橙や好漢遠き日を笑ひ    五十嵐秀彦
元日や銀歯磨いてから眠る    岡村知昭
人日の眼鏡洗つてゐたりけり    森 瑞穂
段ボールの底見えてきし蜜柑かな    玉田憲子
稿なりて海を見にゆく初うらら    谷口智行
去年今年浮き実も顔も真四角に    赤羽根めぐみ
ペンギンのからだ充実冬銀河    岡田由季
たどり来て三百六十進法の余白    野口 裕
なゐのこと話し込んだる御慶あり    神保と志ゆき
余震また餅花ばらばらに揺れて    津川絵理子
越年す菱沼聖子のビフィズス菌    黒岩徳将
ふるふるるゆるるゆるると初景色    わたなべじゅんこ
紙袋鳴らし深夜の初電車    うにがわえりも
白龍の寝息こぼれて霧氷林    瀬戸優理子
駅伝やキプチルチルの歯の白き    たま走哉
八朔の蔕落す俎始    田中惣一郎
越南の醤油のあまき初昔    常原 拓
初空や非常階段に腰掛ける    小林苑を
正月のお目出度さうな花が瓶    鈴木牛後
黒豹の如く海荒れ姫始    矢口晃
恩給に購ふ御節なり囲む    村越敦
餅搗の自ずと足を踏み込みぬ    清水 航
遠山に観音立てり初湯殿    中嶋憲武
牛日を募金に換えられるいろいろ    橋本直
お雑煮のあれやこれやと平和来る    田中目八
ミニカバの赤ちゃんぷるん米こぼす    三倉十月
初明り不意に振られた話とか    伊藤左知子
藁を綯ふ域の時速や松の内    井上雪子
人類に地震戦争鏡餅    松野苑子
初風呂やとおい未来を思案する    加藤絵里子
羊日の無私をよそおふ犬の舌    楠本奇蹄
正月のスプーンを曲げる手品かな    倉田有希
目を閉ぢて啜る雑煮のあたたかし    龍翔
持ち帰るもののひとつにかざり海老    河本高秀
橙を頭に載せてするをどりかな    佐藤りえ
門松にいつも無限がついてくる    細村星一郎
初日はしたたり木の裏で乾く    渡戸 舫
初春や銘菓の餅はごく普通    有瀬こうこ
四日はや指に匂へるムール貝    宮本佳世乃
魚鷹かふて餅のつきたる椀の底    湊圭伍
三日はや貫く棒を焼けのこす    とみた環
祈りつつストーマ替える去年今年    紀本 直美
牛日の耳鼻科の椅子のきゆつと鳴く    亀山鯖男
元朝や地球に残る戦跡    隠岐灌木
初暦光悦展の待ち遠し    小川軽舟
初春の玻璃文鎮のほの青き    箱森裕美
太箸にへばりつきゐてねちねちす    島田牙城
初夢のなかを早くと叫ぶ声    駒木根淳子
心経の一字一字を筆はじめ    月野ぽぽな
咲くことも静かなことねフクジュソウ    高梨章
而して龍女は空へ密事始(ひめはじめ)    九堂夜想
逃げて逃げて逃げてこの世や松七日    山田耕司
喪服脱ぎ角に一尾のごまめ噛む    斎藤悦子
をりゐぶの芽ふくねがひや大旦  琳譜
蟹を見て蟹だと思ふ六日かな  西村麒麟
初日さす沙漠のなかの三日月湖  日原傳
分かりません雑煮の味を問はれても  林雅樹
うづみ火を孕んだままに日は運ぶ  鴇田智哉
元日を大地震後の日の沈む  関悦史
辛うじて今世も人のお正月  中山奈々
龍吠えるごとくに新年の放屁  近恵
双六の折皺越えて次の宿   西原天気
七草や横一列に生えてゐる  上田信治
門松の竹のうつろを落ちる雪  福田若之
ペンギンのからだ充実冬銀河  岡田由季
初空を見上げよ龍が流れゆく  村田 篠
初電車座席きれいに一人置き  沼田美山

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