2024-01-14

対中いずみ【解題】「後記」第292号

【解題】「後記」第292号

対中いずみ



一日百句とはいいながら、裕明は百句に至らなくても悠々としていたようだ。『しばかぶれ 第二集』(邑書林)、島田牙城特集に牙城はインタビューに答えて語っている。
「だいたい泊まりがけで、どこかへ行って、一晩で百句作るぞ、という会ですね。面白いもんで、俺なんかはガチガチに百句作るぞって意気込んでいくんやけど、裕明なんかは五十句も作らへんねん。そういう裕明のゆるさ、というよりは大らかさは、宇佐美魚目譲りですね」
「吟行。必ず吟行でしたね。嘱目で、と。だから裕明は数作らへんわけよ。宿帰ってから、なんかくにゃくにゃと書いて。」
百句会のはなしではないが、「「青」の系列でいうと僕は爽波系なんだ。青蛙はたぶんあきら寄りで。裕明は魚目だった。その三人で集まって楽しく過ごしたね」とも語っている。

第292号では雑詠欄巻頭に、以下が掲載されている。

ラグビーの選手あつまる桜の木

青写真駅のホームが濡れてをり

水涸るる上に道あり人通る

栗の木の下に屈みて息白し

産土神へ懸けしばかりの菜もありぬ

大根引く人三方に立ちにけり

※太字は第一句集『山信』に収められている。「水涸るる」は、「鞍馬」と前書きを付し、「水涸るゝ」に改められている。


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