2024-10-13

垂水文弥 両の壁と五十の塔、そしてそのかなしき王たち 52句作品

  


 
 
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垂水文弥 両の壁と五十の塔、そしてそのかなしき王たち


  これは、明確な弔辞である
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい けふを鶴の忌とする
春着でもつて包丁投げ合つて笑ふ
葱買うて振りて少女の真白き夢
汽車は雪永劫母を持た不るゆゑ
水仙や日の厳を鳥死ぬまで航け
汝に汝のにほひよ汝の春の雪
春は葬(とむらひ)のseason! 激昂の亀と踊ろ
ゆきやなぎからはじまつてゐるこども
春の海力士のにほひしてゐたる
喉潰したら風船になる約束
松公と叫びて松を伐りにけり
福楞察の川をさんぐわつびとの名に
春も人参ホラー映画で盛り上がる
進級してゆく眼(まなこ)の海を搔き出して
酔神父すこし歌ひぬ花林檎
野遊の上等兵と呼ばれけり
ゆふぐれの海市はためきゐやまずを
くらければ昏いランプの中を見る
全身が鎖骨で風鈴売になる
あぢさゐととても謝りつつ思ふ
わたくしはくちなはのくちびる あなたは?
王様は女王様に似て涼し
もはや昆布刈ですよね違つたらウケる
茄子は或る日の腕(かひな)ひらがなめくふたり
我が名は麦死にえいゑんの馬を走らす
昼寝子にgood byeといふ寝言二度
夏ゆふぐれ飛行機売となりにけり
わたくしの生前よりの蚯蚓かな
背泳にぎりしあびとのきたりけり
蛇征ケル時一片ノ炎(ほ)モ不許
これは恋シャワーの中のまるごとが
母ゆゑに氷室に母を連れてきし
ゐる姉と秋の螢を見に来たり
雨すてふ町より来しと云ひをどる
踊りけりあなたの彗星となつて
休暇明スパムスパムと三人来
生前の台風の眼で吐きにけり
蛇穴に入るブラウスを買うて来よ
秋の風鈴吊つて本屋はうつくしいぞ
僕ら惑星万の鶏頭が身の裡
夜食人法(ふらん)を数へゐたるかな
煙草てふさびしき塔を持ちあるく
木のバット鉄のバットよ火恋し
神いくらか我にちかづき眠るかな
冬がくるおほきな顎をたづさへて
落葉して山羊の喧嘩を父と見る
家の中に雪ふる桂信子の忌
何にあこがれ少年はきつねをころす
アルバムの七曲目くらゐの雪が
凍蝶の国と数へきれない扉の家族
抱きしめに来いよ水仙のくせしてなんだよ
  そして産声
われらみなしごすすめ誰が忌かもわからず





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