とは 上田信治
日の色の春のふすまや目の当り
タッパーの蕗味噌四角くて天地
流連の命預けて雲丹の鮨
濡れてゐて考へ顔のあざらしよ
干し網のむかう三月晴れてゐる
散る花のパジャマの下が干してある
花烏賊のみなとに雲の多かりし
花かつお人生は春ひらひらと
はまぐりや夜開いてゐる喫茶店
パン工場消えてもぬけの春の空
富士山もいそぎんちやくも穴開いて
海苔の海だれも見てゐない昼の
雨のあと菠薐草を食べにけり
会館に昔の松や雲に鳥
日永とは鯉一つゐる町の川
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俳句にまつわる諸々の事柄。
photo by Tenki SAIBARA
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