〔ビール俳句〕
ナポレオンも愛飲の
★Bass Brewery/BASS PALE ALE/Classic English-Style Pale Ale/アルコール度数5.1%
岸田祐子
楽しげやビールにどかとウイスキー 星野立子
ホトトギス歳時記で季題となっているお酒は、ビールと焼酎と日本酒。ウイスキーは季節に紐づけられていないけれど、晩秋から冬が似合うと思う。でも、ハイボールなら夏がいい。
この句は、「どかと」という言葉に大きさや重さがあって、ウイスキーに目がいく。ウィスキーのひとつのイメージに、オーセンティックなバーで丸い氷をからんとゆらすというものがあるけれど、「楽しげや」という言葉に、仲間とわいわいやっている賑やかな光景が浮かぶ。どんなウイスキーなのかの説明はないけれど、どかと置かれたら、歓声が起こるような特別なウイスキーだ。
「イギリスではウイスキーのチェイサーとしてバス・ペールエールを飲むんだって」、そう教えてくれたのは、ウイスキー好きの当時の上司。今よりずっと若くて、一人で飲みに行くようなことがほとんどなかった頃の私が、その言葉に押されて初めて飲んだエールスタイルのビールがバス・ペールエールだ。お店の照明が暗かったからか、少し赤味のある透き通った琥珀色に見えた。味は、苦すぎず、ほんのりと甘い。それまでは、ビールは苦いし、どれを飲んでも同じ味だと思っていたので、こんなビールもあるのかと驚いた。
バス・ペールエールを作っているバス・ブリュワリーの創業は1777年。ナポレオンが愛飲していたとか、タイタニック号に積み込まれていたとか、そういった記録が残っていると聞く。また、19世紀のフランス人画家、エドゥアール・マネの油彩「フォリー・ベルジェールのバー」には赤い三角系のラベルがついたバス・ペールエールの瓶が描かれているので、古くから多くの人に愛されてきたビールで間違いないだろう。日本では2018年に正規輸入の取り扱いがなくなった。以降、気軽に飲むことができないのが残念だ。
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