【ビール俳句】
冷蔵庫にいつも
★Brasserie Knot/MIYOSHI/Irish Red Ale/アルコール度数4.5%
岸田祐子
自宅の冷蔵庫には、だいたいいつもビールがあるけど、銘柄はいつも違う。クラフトビールは、枇杷やさくらんぼ、あるいは鯵や鰯のように旬のある生鮮食品と似ていて、塩や砂糖を買うのとは気分が少し違う。もちろん、通年販売している定番の銘柄もあるけれど、定番とされているものでもバッジごとにホップの種類や微妙にレシピが変わっていることがある。また、日々、新しいビールがどんどん生まれて来るので、飲んだことのないビールを飲んでみたいという理由も大きい。それでも、冷蔵庫にいつも入っていたら幸せというビールがいくつかある。
夫逝きて麦酒冷やしてありしまゝ 副島いみ子
この句の妻はビールを飲まない人だろう。お互いに日常的に飲んでいたのであれば、こんな風にしみじみ「麦酒冷やしてありしまゝ」とは言わない。夫だけが飲むビールだからこそ、冷やされたままビールが減らないことを寂しく思う。料理をしなくても、生活をしていれば、冷蔵庫を開ける機会は、日に何度か必ずあって、開ける度に夫が好きだったビールが目に映る。
ややクラシカルで控えめな印象があるアイリッシュレッドエールというスタイルの MIYOSHI は、北海道のブルワリー、Brasserie Knot が作るビールだ。どことなく紅茶の雰囲気を持つMIYOSHIは、赤味を帯びた琥珀色と、モルトのほんのりした甘さが特徴で、ゆるやかな心地がずっと続く。ビアパブでこのビールに出会った時、隣にいたお客さんが、1杯473mlの US パイントで8杯飲んで帰っていった。さすがにびっくりしたけれど、彼の気持ちはよくわかる。
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