2026-07-05

中矢温 角川俳句賞応募日記

角川俳句賞応募日記

中矢温

『なるほど』第2号(2026年5月)より転載:一部改稿

2025/1/3

第71回「角川俳句賞」への応募を今年の目標にする。手元の句を纏めてみる。〔現在の句数38句〕

2025/1/24

細村星一郎さん主催の「ニュー新橋句会」に「もつと真つ白に独楽を回さうもつと」を出句。反応上々。応募のために他動詞をやめて「もつと真つ白に独楽回りだすもつと」に改作(改悪?)。〔42句〕

2025/3/27

「楽園」第4巻第4号が配信。応募群(=未発表必須)の中の一句を、うっかり「楽園」に投句していた(=既発表)ことが発覚。「ナイターの日の雨雲は埼玉へ」を慌てて外す。無念。〔41句〕

2025/3/30

直近の受賞作の掲載された2020~2024年の『俳句』の11月号を購入。ふむふむ。〔41句〕

2025/3/31

「岸本ブロック」〔*〕に気が付き、東大俳句会に出句した5句を削除する。無念。〔36句〕

2025/4/6

正字に気をつけることを思い出し、「掻」を「搔」に、「頬」は「頰」に、「鴎」は「鷗」に修正。〔40句〕

2025/5/5

定期的に参加している「ニュー新橋句会」(夏雲システムを使う対面句会)と「プリマヴェーラ句会」(夏雲システムによるオンライン)と「蛇の目句会」(夏雲システムによるオンライン)の最近の出句を見ながら、一旦50句を揃えてみる。〔50句〕

2025/5/10

そのむかし、どこかで聞いた連作Tipsを試してみる。高濱虚子編『新歳時記』のページ順に句を並べてみるといいらしい。虚子のテキトーで適当な季語の並び順が連作に思いがけないリズムを創出するんだとか。〔50句〕

2025/5/15

郡司和斗氏も角川俳句賞に応募すると聞き、フィードバックを交わす。たとえば「川面とは氷菓に舌のかかりきり」を「川面照る氷菓に舌のかかりきり」に改作。ありがとう!〔50句〕

2025/5/16

全体のトーンを揃える上で、カタカナを減らしてみる。カタカナは軽くて俗な感じになっちゃう気がするので。

万一の受賞に備えて、またモチベーションを上げるために、受賞の言葉を書いてみる。私は自信家である。

ずっと無題だったタイトルを「雲が秋」に決定。選考委員の岸本尚毅氏の『雲は友』と似過ぎていることに後から気が付いた。

両親にも見せてみる。父は俳句を作り、母は作らないが、二人とも言葉のセンスが良くて信頼している。フィードバックを受け、「眠りたる万の蚕のひとこころ」を「一心に万の蚕の眠りたる」に改作。〔50句〕

2025/5/24

コンビニでB4に印刷をし、封筒を準備。何だか急にナイーブになる。〔50句〕

2025/5/25

ポストの前で即興ダンス「受賞の舞」を踊ってから投函。〔50句〕

2025/9/1

結果が気になって落ち着かず、気晴らしにカラオケに行く。泰然自若の心がほしくなる。

2025/9/5

Twitter(現X)で速報あり。千野千佳氏の「愛嬌」が受賞。おめでとうございます!

(第72回角川俳句賞に続く!)

〔*〕「岸本ブロック」とは、岸本尚毅氏が多数の賞で選考委員を務めていることにより、岸本氏とご一緒した句会の提出句は、高い確率で、未発表句に限った賞に応募できなくなる〔=ブロックされる〕現象のこと。岸本氏の高身長もあいまって、バレーボールのブロッカーを想像するとの声多数。

※なお、選考委員が選をしづらくなるため、選考委員が既に見たことのある句を応募作品に入れるのは避けた方がよいと一般的にされている。





第71回角川俳句賞応募作
雲が秋 中矢温

夏蝶が夏帽に来て去りにけり
花は葉に不毛なるまま火傷痕
梅雨冷や椀の数だけ卵割る
一心に万の蚕の眠りたる
水筒のなかの麦茶や雨を呼ぶ
雨の夜を治めてひらく蓮かな
鬣を梳るごと夏草搔く
胡瓜灼け肥えて真つ黄やひん曲がる
掬へざる者に金魚をひとつかな
金魚鉢ニュースは悲喜を行き戻る
頰杖やピアノの上の扇風機
楽園の果実のごとし兜虫
噴水を動かす電気鳩元気
川面照る氷菓に舌のかかりきり
虫干の折に見し画が床の間へ
まなうらに病葉のみが揺れてゐる
重力は恩寵アイスコーヒーぐつと
大阪のすべてが日向狗尾草
刃に負けし今朝の頰にも風爽か
雲が秋湾に芥のひとところ
鶺鴒や水に驚き水に寄る
イヤフォンに何も流さず銀杏散る
鈴やがて晩鐘となる渚かな
きりぎりす電話は遠くまで繋ぐ
遠花火向う暫く旅枕
鉄橋の列車の音や秋の暮
夜の桃本に捺さるる除籍印
葡萄酒に舌少し錆びはくてふ座
釣瓶落しよ瓦斯燈の以前以後
憂国忌底の丈夫な紙袋
冬青空プールに鉄梯子の短か
鷺よりも背高く蘆枯れにけり
漁港とは陰まで濡れてみやこどり
感冒は猫にうつらず日眩し
一月が飛んで五月へ古日記
痰に血の一筋走り年新た
鯉跳んで水輪に戻る睦月かな
虫眠る榾をつぎつぎ割つて積む
もつと真つ白に独楽回りだすもつと
日おもてを踊り踏まるる苜蓿
下駄箱に薪を詰め置く遅日かな
自生する春大根や遺跡群
卒業の壁に手形や赤黄青
交番に塾に卯の花腐しかな
春の空鷗のやうに鴉飛ぶ
石鹸玉も自動噴射の時代かな
芝あをし汚れし凧を畳みつつ
風が気になる凧揚を終へてなほ
ものを思はず春の一日を腹減らず
木蓮や石積んで猫弔へる

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