2026-10-25

西原天気【句集を読む】たべているときのしあわせ 千野千佳『鶯餅』の一句

【句集を読む】
たべているときのしあわせ
千野千佳『鶯餅』の一句

西原天気


人は、食べているとき、とりわけ甘いものを食べているとき、善良で幸せそうな顔になる。

上向いて鶯餅を食べにけり 千野千佳

凝った設えなどなく、すっと一句に仕上がっている。それだけに、つまり、まわりくどくないので、ほんとうに美味しそう。幸せそう。

大福でもわらび餅でも、粉まみれの菓子なら《上向いて》食べそうなものだが、ここは、やはり《鶯餅》でないといけない。大福だと大きすぎるし、わらび餅はぷるんとしすぎている。それに、よろこばしさが際立つのは、なんといっても《鶯餅》だろう。

この句集には、ほかにも、

うららかに太らせてゆく玉子焼 同

クレソンにオムレツの熱うつりけり 同

という美味しそうで幸せそうな卵料理の句もある。


千野千佳『鶯餅』2026年9月/ふらんす堂



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