【句集を読む】
たべているときのしあわせ
千野千佳『鶯餅』の一句
西原天気
人は、食べているとき、とりわけ甘いものを食べているとき、善良で幸せそうな顔になる。
上向いて鶯餅を食べにけり 千野千佳
凝った設えなどなく、すっと一句に仕上がっている。それだけに、つまり、まわりくどくないので、ほんとうに美味しそう。幸せそう。
大福でもわらび餅でも、粉まみれの菓子なら《上向いて》食べそうなものだが、ここは、やはり《鶯餅》でないといけない。大福だと大きすぎるし、わらび餅はぷるんとしすぎている。それに、よろこばしさが際立つのは、なんといっても《鶯餅》だろう。
この句集には、ほかにも、
うららかに太らせてゆく玉子焼 同
クレソンにオムレツの熱うつりけり 同
という美味しそうで幸せそうな卵料理の句もある。
千野千佳『鶯餅』2026年9月/ふらんす堂

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