2026-11-08

小津夜景  白象  16句




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白 象    小津夜景

初恋
うすらひのうひうひしきをうらがへす

忍恋
見つかつてやらぬつもりの落椿

見恋
鍵穴の向かうも風船持つてゐる

寄遊女恋
白象に乗つて帰りぬ朧の夜

寄傀儡恋
春の宵三人がかりで抱かれけり

怨恋
怨むには小さすぎたる蚊の心臓

尋恋
三軒目から坂になる紫陽花の

寄衣恋
着てしまふ夕立の匂ひごとシャツを


寄海恋
海の家たたみて海を返しけり

寄関恋
ひと房の葡萄のなかの改札よ

寄月恋
首すじに月をあてがつてねむいの

別恋
さよならの「さ」でもう梨の音がした

寄獣恋
しろながすくぢらのどこを撫でてゐる

旧恋
舊の字に鳥の棲みつく古日記

稀恋
彗星の来ない年にも豆を撒く

絶恋
雪だるまきみの名をつけ日向へと


*前書きの題は『六百番歌合』恋の部による 

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