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2014-08-03

自由律俳句を読む 54 小澤碧童〔2〕 馬場古戸暢



自由律俳句を読む 54 小澤碧童2

馬場古戸暢


前回に引き続き、小澤碧童句を鑑賞する。

額に来る蠅の一人居るなり  小澤碧童

ここでの一人は、碧堂自身の方を指しているものと考えている。蠅だけが動き回る世界、家人はまだ、帰ってこぬ。

大きな鯵のひものとしよりの夏のまひる  同

夏の暑い最中、鯵のひものが干してある縁側に、としよりがひとりで何するわけもなく座っているのだろう。このとしよりを碧童自身とした場合と別の誰かとした場合では、視点がくるりと逆転する。

夏蜜柑を買ひ子供の手に触れ  同

子供が夏蜜柑を売っていたのだろうか。時代を感じさせる句。もっとも、子供の手のあたたかさは、いつの時代も変わるまい。

十薬眺めゐる俺を妻は知らうとせず  同

体調を崩して、十薬を飲むこととなったのだろうか。そんな俺のことを、妻は気にもかけていない。結婚何年目の状況か、気になる句。

あるまゝにまた成るまゝに柿落葉  同

この句を英訳するならば、Let it beから始まることとなろうか。B'zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」の歌を思い浮かべると、柿落葉に急に躍動感が出る。

2014-07-27

自由律俳句を読む 53 小澤碧童〔1〕 馬場古戸暢



自由律俳句を読む 53 小澤碧童1

馬場古戸暢


小澤碧童(おざわへきどう、1881-1941)は、子規門の松下紫人に指導を受けて後、碧梧桐門へ入門した。瀧井孝『無限抱擁』に出てくる主人公の友人青舎は、碧童をモデルとしている。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。

初冬三日程の髭の伸び  小澤碧童

たまの連休があったのだろう。これから寒くなるのだから、暖をとる目的で、このまま伸ばしっぱなしでいるのも悪くないかもしれない。

ねぎまの煮え我より箸下ろしたる  同

家長らしい句。あるいは単に食いしん坊だったのだろうか。酒が進みそうである。

家の者よ布団敷くよろこびの満ち  同

家の者よというどこか中途半端な呼びかけに、面白みを感じる。妻や子が騒ぎながら、畳の上に布団を敷いている様が浮かんでくる。小さな幸せに満ち溢れた句。

もう寝かして欲しくお前の膝に娥が落ち  同

居間でのできごとか、寝間でのできごとか。それ次第で、詠まれた景はがらりと変わる。居間であれば、お前は正座をして、俺に説教をし続けていたのだろう。

盆燈籠よわが酔ひしれて寝るまでなり  同

普段は何も感じない盆燈籠に意味を見出すのは、酒が入っているからだろう。あるいは、お盆に帰って来たご先祖様が成せる業か。